組織が抱える矛盾『成果と育成』
理想の組織は、『速く動く組織』です。
環境は変化し続けます。
その中で、いち早く正解に辿り着くためには、
・速く動いて、
・速く失敗し、
・その失敗に速く気づき、
・速く方向転換する、
を繰り返すことが必要です。
しかしながら、組織が速く動くことと、社員の成長のために時間をかけて我慢することは、ときに矛盾します。
特に、
・メンバーのプロセスへの介入
・階層を跨いだコミュニケーション
の2つにおいて、
組織が速く動くこととメンバーの成長のために我慢することのバランスをリーダーは求められます。
今回は、この2つについて、書き留めておきます。
✅メンバーのプロセスへの介入
多くの場合、
上司は、部下よりも経験豊富なため、
成果に結びつくプロセスが分かっています。
この時、上司が部下のプロセスに介入し、
「自分の言ったとおりに動け!」
という指示を出すと、
成果が早く出る可能性が高まる一方で、
部下が自分で考えなくなり、指示待ちになるという弊害が起こります。
一方で、
上司がゴールを示し、部下にゴールに至るプロセスを考えさせる場合、失敗の可能性(成果に結びつかない可能性)が高まる一方で、自分で考えて失敗した結果として得た経験が成長に繋がります。
ゴールをどの粒度で設定し、
どこまでのプロセスを部下に考えさせるか。
成果へのスピードを採るか、育成の我慢を採るか、リーダーには、ここのバランスが求められます。
✅階層を跨いだコミュニケーション
一人の人間が管理できる人数は、7人程度だと言われています。
この人数を超えて人が増えると、
意思決定に遅れが出るため、
リーダーは、一部の責任と権限を委譲し、中間管理者を立て、
意思決定の遅れを解消しようとします。
中間管理者を立てた際、
中間管理者の育成の我慢を採るか、
成果に対するスピード重視で、中間管理者を時に飛び越えて、下の階層と直接やりとりをするのか、
ここでも成果へのスピードと育成の我慢のバランスが求められます。
✅「Aか?Bか?」ではなく「Aも、Bも」
短期で見れば、
経験豊富なリーダーが、
部下のプロセスに介入したり、
階層を飛び越えて現場に介入をした方が、
成果が積み上がる可能性が高まります。
しかし、これでは、
自ら考えることが出来る部下が育たず、
中間管理者も機能しないまま組織がスケールできません。
この矛盾に向き合うためには、
リーダーが未来のイメージを持って、
利益を最大化させるためのポイントを見極める必要があります。
5年後、どのような組織を描くのか?
ここから逆算し、
短期的な利益と育成の我慢を天秤にかけながら、
試行錯誤することが求められます。
他者に大きな貢献をするためには、
2人以上の人間が目的や理由をもって集まり、組織を作ることが求められます。
多様な能力を持つ異なる人間を
一つの目的や目標に収束させるという矛盾は、
複数の人間が共有する時間という資源の使い方において表出してきます。
組織の成長は、メンバー個々の成長に依存します。
短期的に見て、
時間を成果のために投じるか、
時間を育成のために投じるか、
このバランスに、組織のリーダーは常に向き合うことが求められます。
この時に大切なことは、
「成果か?育成か?」
という二者択一で考えることではなく
「成果も育成も」
という両立を模索し続けることではないでしょうか。