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【読書ノート】私たちは子どもに何ができるのか-非認知能力を育み、格差に挑む

読んだ本の気になる部分を書き留めていきます。
今回採り上げる本は、『私たちは子どもに何ができるのか-非認知能力を育み、格差に挑む』著.ポール・タフです。


✅本を手に取った切っ掛け

社外の勉強会に参加した際、薦められた本です。

読んでみると、

①子育てに関する気づき、
②大人の組織内行動に関する気づき、

2つの観点で気になる点があり、書き留めておきます。

✅書き留めたところ① 学習のための積み木

 ニューヨークを拠点とする非営利団体<ターンアラウンド・フォー・チルドレン>は、2016年に作成した報告書のなかで、こうした幼少期の能力を「学習のための積み木」と呼んだ。・・・

報告書によれば、レジリエンス、好奇心、学業への粘りといった高次の非認知能力は、まず土台となる実行機能、つまり自己認識能力や人間関係をつくる能力などが発達していないと身につけるのがむずかしい。こうした能力も、人生の最初期に築かれるはずの安定したアタッチメントや、ストレスを管理する能力、自制心といった基幹の上に成り立つ。

同著 p.75
図10 学習のための積み木 本書p.77

①子育てに関する気づき

「学習のための積み木」という概念は、
自分が子供と接する上で、
一つの観点を提供してくれます。

「アタッチメント」
「ストレス管理」
「自制心」

の土台の上、

「自己認識」
「他者との関係性」

を構築していく。

子育ての理想は、
「自己効力感」を持ち、
「主体性」を発揮し、
「好奇心」の赴くままに、
成長して欲しいと願っていますが、

積み木のようにバランスを整えていくことが、
理想の子育てには必要との考えは、
大きな示唆を与えてくれるものでした。

②大人の組織行動に関する気づき

ビジネスでは、
「PDCA」
を回すことが大切、
と言われたりしますが、

以前、お客様との会話で、

そもそもPDCAを回すための
「自己効力感」
すなわち、
「やれば、できる」
という考えに至れない人もいる。

という話しが出たことがありました。

自己効力感が無ければ、
主体的に成長していくことは困難です。

そもそもの精神的な土台を築いていくことが、
PDCA等のマネジメントを行う前提として
一定のメンバーに求められるケースがあります。

これも、自分自身では気づけない点でした。

✅書き留めたところ② 有能感/自律性/関係性

生徒たちが教室で「自律性」を実感するのは、教師が「生徒に自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限に持たせ」、管理、強制されていると感じさせないときである。また、生徒が「有能感」を持つのは、やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスクー生徒たちの現在の能力をほんの少し超える課題ーを教師が与えるときである。さらに、生徒が「関係性」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるときである。

本著 p.91

関係性→有能感→自律性
この流れも
「学習のための積み木」
のフレームワークと似ています。

これも子育てだけではなく、
組織内のメンバー育成も同様ではないでしょうか。

上司-部下の関係性において、
双方のリスペクトを忘れず、

ストレッチ目標を設定した上で、

目標に至るプロセスについては、
メンバーに判断を委ねる。

このような環境下において、
メンバーの育成は上手くいきやすいです。

ここで、

・上司/部下間でのリスペクトがない
・目標が一律でメンバーの状態を踏まえた設定ではない、
・プロセスについてもこと細かく上司が介入する。

このような状態になると、
メンバーの育成が上手く機能しない、
ということがよくあります。

✅書き留めたところ③ 四つの信念

生徒に粘り強い行動をさせるにはどうしたらいいのか?ファリントンが調査から引きだした結論によれば、「学業のための粘り強さ」の背後にあるカギは、「学業のためのマインドセット(心のありよう)」、つまり子供たちそれぞれの姿勢や自己認識である。ファリントンは生徒のマインドセットに関する大量の研究から、カギとなる四つの信念を抽出した。生徒たちの教室でのがんばりに最も大きく貢献する信念である。

①私はこの学校に所属している。
②私の能力は努力によって伸びる。
③私はこれを成功させることができる。
④この勉強は私にとって価値がある。


生徒たちが授業中にこの信念を持っていられれば、そこで出くわす課題や失敗を乗りこれられる。この信念がなければ、最初の困難がちらりと見えたところであきらめてしまうかもしれない。

同著 p.109

この四つの信念を見た時、
「学業のための粘り強さ」は、
個人の資質というよりも、
周囲との関係性の中で醸成されるものだと感じました。

集団内において
互いに承認し合う関係性の醸成が、
成長の源泉となるのかもしれません。

✅読後メモ

以前、宇田川さんが書かれた
『他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論』
という書籍を読みました。

ロナルド・ハイフェッツ。
彼は、既存の方法で解決できる問題のことを「技術的問題」(technical problem)、既存の方法で一方的に解決ができない複雑で困難な問題のことを「適応課題」(adaptive challenge)と定義しました。

他者と働く p.4-5

『見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」』

が採り上げられていますが、
「技術的問題」と「適応課題」の境目について、
この本『私たちは子どもに何ができるのか』を読んで、難しさを感じました。

仕事でも、勉強でも、スポーツでも、
人は他者に対して、
「やれば、できるでしょ」
と思ってしまいがちですが、

この「やれば、できる」に至るための
自己効力感や主体性が、
過去からの「学習の積み木」の上に成立しているとすれば、

アタッチメント
ストレス管理
自制心

といった、親子や師弟関係の中で、
個人を整えることが土台にあり、

他者との関係性の中で、
自己認識するための環境

を整える必要がありそうです。

子育てでも仕事でも、
成長を支援することは、

勉強の方法や、仕事の方法を伝えることによる
「技術的課題」
を解決するだけではなく、

自分と相手との関係性や
他者との関係性からの自己認識
まで掘り下げて、
「適応課題」
としてアプローチをしていかないと、
個人の成長に結びつかないケースがある

ということは、
「学習の積み木」というフレームワークで、
理解できたような気がします。

個人的には、この「学習の積み木」の概念は、
「組織開発」
に結び付けられそうだと感じています。

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さくらいまさひろ@組織コンサルタント
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