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厳しいがどこか温かい組織を志向する【読書ノート】「組織という有機体」のデザイン

組織で仕事をする上で、組織が目指す姿を言語化し、組織の構成員の中で共有することは大切なことです。

そんな中、下記書籍の中にある
『厳しいがどこか温かい組織を志向する』
という言葉が気になったため、本書の該当箇所と所見を書き留めておきます。

書き留めたところ① 組織におけるシステム

組織はどんなシステムで構成されているのだろうか。まず、

①意思決定システム、
②業績モニター・評価システム、そして、
③人材育成・配置システム

の三つの組織の主要システムがある。
それぞれのシステムにはサブシステムがある。

①意思決定システムには情報収集システム、会議システムがあり、
②業績モニター・評価システムには管理会計システムや人事考課システム、そして
③人材育成・配置システムには、採用・退出システム、訓練システム
などのサブシステムがある。

「組織という有機体」のデザイン p.6

この本では、組織をつくる作業で無視されやすいシステムに焦点を当てています。

「厳しく、温かい」に関連する部分としては、評価システム、人材育成・配置システムが関わっています。

書き留めたところ② 厳しく温かい

組織は「優しく冷たい」のではなく、「厳しく温かい」ものであることが望ましい。しかし、企業やその他の組織を取り巻く経営環境は、厳しくなっているのがほとんどだ。「厳しく温かい」企業風土をつくり出すには、よほどの努力が必要になる。

「組織という有機体」のデザイン p.63

 たとえば、あるポジションに抜擢した人物がうまく機能していないことがわかったとする。「優しく冷たい」組織文化では、「いま替えると当人も面目なく、周りに対して恥ずかしい思いをするだろうから、1年くらい様子を見て対処しよう」という判断をする。その結果、当人は相変わらずやることがうまくいかない、いよいよ自身を失う。焦って工夫をするが改善しない、という悪循環に陥ってしまうことになる。
・・・
 これに対して、「厳しく温かい」組織文化では、うまくいっていない人物がいれば、すぐに交替させる。それが就任数カ月後、極端な場合、数週間後であっても、うまくいっていなければ、それはミスマッチなのだから交替は早いほうがよい、という割り切った考え方をする。

「組織という有機体」のデザイン p.70-71

新規事業に力のある人材を登用したにも関わらず、結果が芳しくない時、交替・撤退ラインが不明確なまま、ズルズルと、変化の機会も人材も失っていくケースを最近よく目にします。

組織の成長、個人の成長

「厳しく、温かい組織」を志向する前提として、組織の成長(継続)と個人の成長(継続)を両立させることが大切だと感じました。

 あるとき、業績のジリ貧状況を変えるために、これまで社長を出したことのない部門から社長が選ばれた。彼は当然、大改革を計画し、実施した。それはかなりの成果を上げた。しかし、その裏で多くの社員の、人生の期待を壊してしまったのである。早期退職を実施したのだ。「出世はしないまでも、会社に一生懸命貢献していれば、最後までファミリーとして面倒を見てくれる」ということが壊れてしまった。突如として、「冷たい」組織に変わってしまったのである。

「組織という有機体」のデザイン p.64-65

これは、会社の成長(継続)を求めるあまり、個人の成長(継続)を御座なりにしてしまいました。

会社の周りにいろいろなポジションをつくり、雇用を確保するのはよくやられている。しかし、人材をちゃんと育てて、喜んで受け入れてくれる会社に現在より高いポジションを用意してもらい、彼我の給与差をできるだけなくすまではやるが、後は自分の才覚で生き延びろと突き放して送り出すやり方のほうが「厳しく温かい」。

「組織という有機体」のデザイン p.66

この場合、会社の成長(継続)と個人の成長(継続)を両立させることが出来た状態だと考えます。

環境の変化に対応するために、組織を速く動かすことと、社員の成長のため育成に時間をかけることとの間には、矛盾を抱えます。

厳しい「執行」と温かい「経営」を実現するための時間軸

経営から見た時、
(短期:週/月単位)
目標や基準に対する厳しさ/複数のユニットを育てる
(中期:四半期/年単位)
複数のユニットを持つことで、会社の持続的な成長を担保する
(長期:3~5年単位)
複数のユニットを成長させることで、会社を持続的に成長させ、社員に失敗する機会、成長のための時間を確保し、次のユニットを創出していく。


短期で、目標や基準に対する厳しさを求める一方で、これにより組織内に複数の選択肢と余剰を作ることで、社員に成長の機会(時間)を作り、社員の成長が次の機会を創り出していく。


時間軸の中で、短期の厳しさと、中長期の温かさを両立していくためには、中長期でのイメージを明確に描くことが求められます。


未来を描く「経営」と、目標や基準を達成する「執行」。

厳しい「執行」と温かい「経営」を実現する組織が理想なのかもしれません。

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さくらいまさひろ@組織コンサルタント
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