お酒時間短歌&ショートエッセイ「酒の肴」
さかずきの 先の我が子の 寝顔みて 気持ちほぐるる 冬の夜かな
(長谷川誠ココロの短歌)
静かに寝息をたてる我が子。
寝かしつけていたはずが、いつの間にか自分も寝てしまった妻。
そんな風景を眺め、妻に布団をかけ、グラスに注いだばかりの冷え冷えのビールをグビリと一口。そっと寝室の扉を閉める私。
ふぅ…。さらにビールを一口あおり、菩薩のような笑みを浮かべながら虚空を眺める。ゆっくりと体に染み渡っていくアルコール、じんわりと温かくなる体、ぼんやりと今日の我が子の可愛さを振り返る夜。
嗚呼、なんと素敵な夜なのだろう。ビール君、今日もありがとう。相変わらず君は美味しいねぇ。
特に今日はアレだろうか、毎年楽しみにしている岩手県遠野産のとれたてホップを使用したビール君だからだろうか。どこかあの日見た遠野の緑豊かな自然と、妖怪の聖地「遠野」にいるんだ!というワクワク感を思い出せてくれるような気がする。
…それにしても。
幸せだと感じる「お酒と共にある時間」が、こうも変わろうとは思わなかった。どこか、思えば遠くに来たもんだ的な感慨深ささえある。
結婚、ましてや子供を授かるなんて、毎晩ダラダラとアニメを観たりゲームをしたりしながら晩酌していた20年前の私に伝えたら、腰を抜かし、生まれたての小鹿並みに足をプルプルさせて立ち上がれなくなるレベルの変化である。
そんな変化に伴い、幸せなお酒時間も私一人のものから、妻と二人のものとなり、そして今はグラス越しに我が子の顔が見える家族3人のものとなった。
我らがカワイイカワイイ愛娘ちゃん。やれ今日は「おはよ」が言えるようになったと妻と祝杯を交わし。やれ今日は一人ですべり台を滑り降りることができた、アレができた、コレができたと、妻と二人でニコニコしながら、愛娘ちゃんの就寝後にお酒を交えた報告会を開いたり。
我が子の成長を酒の肴にして飲むことの、何と楽しいことであろうか。
自分の親もそうだったのだろうか。そして我が子もいつの日か、こんな幸せなお酒時間を味わうのだろうか。
そんな「時を越える妄想」をボンヤリと繰り広げられるのも、静かな夜に静かにお酒がそっと寄り添ってくれているからかもしれない。
どれどれ、もう一本飲みましょうかねぇ。