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「目標管理」の本質的な思想は「自己目標管理」だ
皆さんの会社でも当たり前のように目標管理をされていることと思います。
娘との会話でもよく「MBO」という単語が発せられます。
目標管理という言葉と概念はドラッカーが発明し、1954年に出版された『現代の経営』のなかで初めて提唱したものだといわれています。
その背景には、それまでの時代の肉体労働者は、時間当たりの生産個数や進捗数量で管理することができましたが、新しく登場した知識労働者は第三者が同じように管理、監督することは事実上不可能だという事実があります。
では何によって管理するか。
「成果をあげるには、あらゆる経営管理者のものの見方と仕事の仕方を共通の目標に向ける必要がある」
そして目標とは何かについて次のように言っています。
「目標なるものは鉄道の時刻表ではない。それは航海のための羅針盤である。それは目的地にいたる航路を指し示す」
ここまではわかりやすい話なのですが、目標管理が実際の仕事の現場で有効に機能している企業はそれほど多くはないのではないでしょうか。
私も会社勤め時代(少し古い話ですが)、会社から提出を義務付けられる目標管理シートそのものが大嫌いで、誰がこんなことを考えたんだと、とても嫌悪していたことを覚えています(笑)。
ドラッカーが提唱した目標管理は、実は正確には「自己目標管理」で、原文では Management by Objectives and Self-control となっています。
「自己目標管理を採用している組織は多い。しかし、真の自己管理を伴う自己目標管理を実現しているところは少ない。自己目標管理は、スローガン、手法、方法に終わってはならない。原則としなければならない」
ドラッカーは最初からずっと、自己目標管理と言っていたのですが、初期の頃から企業はその中核となる「Self-control」という単語を省いて、単にMBOと呼んで定着させてしまい、結果的に企業の管理に都合のいいように曲解してしまった名残が今日に至るまで続いている可能性があります。
戦前までの、いわゆる支配による管理から、自らの動機に基づく管理に転換すべきだというのがドラッカーの考えであり、自己目標管理の真髄です。
組織の上に立つものが目標を与え、その達成を管理するものではないし、ましてや、目標を支配の道具に使うなどはもってのほかです。
マネジメントとは、組織と個人の目標のベクトルを合わせて、一人ひとりに貢献を促し、束ね、成果をあげることだからです。
Self-control のためには Self-management が不可欠です。
話しはどんどん深くなっていきます。
MBOだけでSを省いて目標管理を運用しようとすると、なかなかうまくいくことはないでしょう。
今振り返ると、私の会社員時代の目標管理制度にも Self-control の概念はなく、多くの企業と同じように、それまではなかった上司と部下の1on1の時のツールとして利用していました。
それはそれで、社内コミュニケーションの推進を図る意味で役に立つのかも知れませんが、Self-control の概念が抜け落ちているために、ひたすら上司から部下への要望に終始してしまいがちです。
MBOではなく、MBOSなのだという、この思想の原点を確認しておきたいものです。