普段の点検だけでは見えない部分もあるからこそ■2023年03月24日更新
広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。
『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
■普段の点検では見えない部分も多い
多くの自転車店で実施している自転車点検。
当店も例外ではなく全体点検等を実施しています。
言うまでもなくどんな自転車でも定期的な点検は必要です。
それでも点検だけでは見えない部分も多いく、特にスポーツタイプの自転車は繊細なので1年~2年を目安にオーバーホールの実施が推奨されています。
早めに不具合を見つけて早めに対処できれば、その分修理費用も節約できるかもしれません。
■お預かり時点
ご依頼いただいたのはこちらの車体です。
ブランド【ANCHOR】アンカー
車種【RL8W】
女性向けのロードバイクで、サイズ展開も豊富ですね。
普段の洗車ではなかなかキレイにするのが難しいドライブトレイン。
それでも比較的キレイにされています。
花粉や砂等はどうしてもすぐに付着してしまいますよね。
フレームの色に合わせたボトルケージもこだわりポイントのひとつだそうです。
ハンドルまわりをスッキリさせ、低い位置にフロントライトをセットできるようにもカスタマイズされていました。
ハンドルまわりにもいろいろな工夫が見られます。
クランクセットはユーザーさんの身長に合わせたものを選んであり、パーツ選びのセンスの高さも伺えます。
Di2仕様のため、使わなくなったシフトケーブルの出入り口には専用のグロメットが装備されています。
シートポストをカーボン製にすることで低重心化や軽量化による恩恵を受けられます。
エレクトリックワイヤーはちゃんとタイヤに当たらないようになっています。
バーテープは今回交換する予定です。
愛車との長い付き合いでキズは残っていますが、
フレーム全体はとてもキレイにされています。
■作業開始ッ!
再利用できるものは再利用します。
元の状態を参考に、作業を進めていきます。
まずはフレームを保護。
◆分解スタート
ペダルも汚れは溜まっているので後でできるだけキレイにしましょう。
ボトルケージも慎重に外します。
透明のプラワッシャーが付いていることもあり、無くしてしまうと厄介だからです。
外す前にできるだけ汚れは落としておきます。
BBシェルや
フォークはこういう時じゃないとなかなかキレイにできないものです。
フォークの状態。
カーボンコラムだとプレッシャーアンカーが浮いてくることもあります。
ヘッドチューブもこういうときじゃなければ掃除はし辛いですよね。
フロントフォークはずいぶんキレイに掃除することができました。
バリアスコートで輝きを与えてみました。
これで今後の汚れも付着しにくくなるでしょう。
ベアリング受けもこんなにキレイになりました。
◆ついでに精度向上
BBシェルは一旦キレイにしてから、
ネジを再タッピング。
実際にこれだけ削りカスが出てきました。
削りカスはできるだけ除去してあります。
アウトボードタイプのBBを採用しているので、フェイシングも実施。
不要な塗装は落としますが、ここまでが限界でしょうか。
ボトルケージ台座のネジも再タッピングして精度を上げておきます。
◆洗浄!
フロントチェーンリングは分解できるだけ分解。
掃除しがいがありそうです。
ブレーキ全体も分解して洗浄。
もちろん、ブレーキシューは隔離しています。
それぞれピカピカになりました。
必要箇所には注油もしてあります。
すでに変色していたものはそのままですが、素手で触っても全く汚れはしません。
できるだけ長持ちするような下処理もしてあります。
フロントフォークにブレーキセットを組み付け。
フレームもかなりキレイになりました。
ヘッドベアリングも元々はこれだけ汚れていました。
それもここまでキレイになりました。
必要に応じてグリスもしっかり使います。
ボトルケージも洗浄して
この通りピカピカに。
ホイールも洗浄して
センター出しや
フレの調整も入念に行いました。
チューブやタイヤも丁寧に組み付け済み。
タイヤは事前に前後とも洗ってあります。
ディレイラーハンガーもキレイになりました。
いろいろとキレイになったのでそれぞれ組み付けしていきます。
【SHIMANO】(シマノ)のデュラエースホイールは分解洗浄しやすい構造になっています。
ただしフリーボディーは脱着できるものの、フリーボディー自体の分解はできない構造です。
アクスルシャフトの玉押しが傷んでいました。
反対側は傷んでいませんが、グリスは無くなっています。
フロントも同様です。
フロントのシャフトは無事でした。
↑こちらはフロントのハブ分解後の様子。
ユーザーさんの使用用途を考慮してグリスを選定。
BB装着時にも使用環境を考慮してグリスを選定し、
丁寧に組み付けます。
BBシェルの精度が上がっているので、基本的に素手でもスルスル入ってくれました。
↑ディレイラーハンガーの芯出し作業。
サドルまわりも分解して掃除していきます。
元の位置に合わせて組み付け、
こだわりのアクセサリーもそのまま付けています。
自転車らしいカタチになってきましたね。
ケーブル類の下処理はとても大切です。
この車体の作業前任者さんもいい仕事をなさっていたのでしょう。
ユーザーさんの管理状態が良かったこともあり、ケーブル類は再利用出来そうです。
改めて長持ち処理を施します。
ハンドルバーエンドキャップの取付が少々斜めになっていたので、ここは直しておきたいところ。
エレクトリックワイヤーのルーティングも見直します。
このように金属のフチにエレクトリックワイヤーが直に当たると良くないので、
ビニールテープで対策しています。
◆再びホイール
必要な補修部品が入荷したので早速見ていきましょう。
↑左が古い方で右が新しい方です。
フリーボディーまわりも入念に掃除しました。
今回はフリーボディーは交換せずに、できるだけ掃除してグリスアップもして再利用しています。
14mmの六角レンチで脱着できます。
少しずつ確実に組み付けていきます。
ハブ部品は新品になり、グリスもかなり多めに使っています。
これでしばらくは大丈夫でしょう。
◆仕上がり間近
リアホイールに新品のカセットスプロケットを装着。
クランクもキレイになりました。
ペダルのサビもできるだけ落とし、サビ予防の油分を含ませています。
旧世代のエレクトリックワイヤーとレバーを繋ぐ場合、落車によるレバー固定のズレによってエレクトリックワイヤーが抜けないよう、少し工夫が必要です。
試行錯誤しながらエレクトリックワイヤーを良い感じにまとめ上げることができたので、バーテープを巻いてほぼ作業は完了です。
◆Di2ならではの作業
【SHIMANO】(シマノ)の電動コンポーネンツ(グループセット)を採用しているので、まずは充電しましょう。
充電ポートの場所は品番や車体の仕様によって異なります。
充電中…。
このランプが消えれば充電完了です。
◆Di2ファームウェアのアップデート
パソコンとバイクを繋いで、こういう手順で進めます。
開くソフトのバージョンにもご注意を!
このように一覧が表示されるので、全てを選択します。
アップデートボタンをクリック!
少し待つと…
徐々に更新作業が自動的に始まります。
更新が済んだようです。
OKを押してみましょう。
一覧の表示を確認して、全てが最新状態になっていればアップデート完了です。
■完成
今回のオーバーホール作業は完了しました。
実はバーテープの色は変わっています。
ハンドルまわりのアクセサリーはそのままですが、少し取付位置を変えています。
またユーザーさんの好みでいろいろ試してみていただきたいです。
ハブもキレイになりました。
バルブキャップは絶対に無いといけないものではありませんが、普段のメンテナンスでよく目につく部分です。
こだわりのものを採用すると気分も上がりますよね。
ドライブトレインもキレイになりました。
やはりチェーンとスプロケットが新品になったのは大きな要因でしょう。
チェーンリングを固定するボルトもキレイになりました。
ペダルもサビをできるだけ落として掃除し、油分を含ませているので新たにサビが生じにくくなっていると思います。
これでリフレッシュして、また快適に走り出せるでしょう。
ブレーキの動きもかなり良くなりました。
サドルに付いていたアクセサリーを固定するバンドには、ケガ防止のために少し手を加えています。
Di2にワイヤレスユニットも採用してあり、サイコンとの連携も上手く活用できますね。
自分に合うクランクを選ぶことでより楽に、より速く走れます。
WH-R9100-C24のデュラエース・ホイール。
性能は言うまでもなく素晴らしいものですが、ヴィジュアル的にもカッコイイですよね。
ヴィジュアル的な変化はほとんど無いため、純粋にオーバーホールだけだと何がどう変わったかが伝わりにくいかもしれません。
しかし、以前との違いは乗ればわかります。
対象車体のユーザーさんにしかわからない特権とも言えるでしょうか。
オーバーホールとカスタマイズやアップグレードは同時進行で行うと作業工賃面でユーザーさんにとってはメリットがあるのは事実です。
当店ではオーバーホールのご相談を受けた際に、ユーザーさんが愛車をアップグレードやカスタマイズしたいか等も伺います。
不要なアップグレードパーツやカスタマイズパーツ等を強引に売りつけるようなことはしません。
必要に応じてアドバイスもさせていただきます。
自分の大切な自転車だからこそ、自分がその自転車とどう付き合いたいかをぜひお聞かせ下さい。
できるだけ細かく、それぞれのメリットやデメリット、今後考えられるリスク等もしっかりとお伝えします。
パッと見た感じはキレイでも、普段は手が届かない部分も多いのが自転車です。
定期的なオーバーホール作業は安全にも繋がり、後々の大きな支出を抑えることにも繋がりますよ。
■自転車のご依頼・ご相談等はメールでお気軽にどうぞ↓
当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。
ご依頼・ご相談はメールにて24時間いつでもどうぞ↓
※運転中や作業中等ですぐに返信できない場合もありますが、チャット感覚でお気軽にご利用下さいませ。