東京大学2017年国語第4問 『藤』幸田文
筆者の子どもの頃の思い出がつづられている。解答のポイントは筆者の意識が徹頭徹尾、父親および父親からの愛情に向いていたことを見抜き、表現することであると思う。
(一)「親が世話をやいた」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
筆者の父親が娘のためにしたことを文中から拾ってまとめればよい。
まず、傍線部アの直前に「自然と親しむように」とある。それから、「私は三人きょうだいだが、めいめいに木が与えられていた。不公平がないように、同じ種類の木を一本ずつ、これは誰のときめて植えてあった。だから蜜柑も三本、棚も三本、桜も椿も三本ずつあって、持主がきまっていた」、「花の木実の木と、子供の好くように配慮して、関心をもたせるようにした」とあり、次の段落には「父はまた、木の葉のあてっこをさせた。木の葉をとってきて、あてさせるのである。その葉がどの木のものか、はっきりおぼえさせるためだ」とある。
以上のことから、「父親が三人の子供それぞれに種類の異なる木を一本ずつ育てさせ、また、葉がどの木のものか当てさせて、自然に親しませるようにしたということ。」(67字)
(二)「嫉妬の淋しさ」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。
嫉妬心の混じった淋しさという意味だと解釈し、嫉妬心と淋しさについて述べた部分を抜き出してみる。
まず、第3段落に「父はまた、木の葉のあてっこをさせた。木の葉をとってきて、あてさせるのである。その葉がどの木のものか、はっきりおぼえさせるためだろう。姉はそれが得意だった」とあり、傍線部イより前の部分では「出来のいい姉を、父は文句なくよろこんで、次々にもっと教えようとした。姉にはそれが理解できるらしかったが、私はそうはいかなかった。姉はいつも父と連立ち、妹はいつも置去りにされ、でも仕方がないから、うしろから一人でついていく」とある。
また、傍線部以後には、「一方はうまれつき聡いという恵まれた素質をもつ上に、教える人を喜ばせ、自分もたのしく和気あいあいのうちに進歩する。一方は鈍いという負目をもつ上に、教える人をなげかせ、自分も楽しまず、ねたましさを味う」とある。
以上のことをまとめると、「自分には覚えられない葉の種類を言い当てて父親を喜ばせた姉を妬ましく思うとともに、父親と姉に置き去りにされたことが寂しかったということ。」(67字)という解答例ができる。
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