東京大学2024年国語第4問 『クレリエール』菅原百合絵
設問(一)「ガラスは薄くなっていくが、障壁がなくなる日は決して来ない」(傍線部ア) とはどういうことか、説明せよ。
傍線部アの「ガラス」と「障壁」はどちらも比喩であり、外国語の不自由さのことである。
第2段落には「難解な構文をどう訳すか手を焼く」「辞書を引きながら拙いフランス語でなんとか表現しようとして言葉に詰まる」とあるので、外国語の文章の解釈と表現について難渋している様子がわかる。
傍線部の直前には「少しずつ言葉を覚えるにつれて」とあるので、「ガラスは薄くなっていく」とは、外国語学習を進めるにつれ、解釈や表現については習熟していくことだということがわかる。
それに対し、「障壁がなくなる日は決して来ない」とあるのは、母語同様につかいこなせることは絶対にないということになる。
以上のことから、「外国語の学習を進めるにつれ、解釈や表現について習熟していくものの、母語同様に自然に使いこなせるようには絶対にならないということ。」(64字)という解答例ができあがる。
設問(二)「世界の見方が変容する経験」(傍線部イ)とはどういうことか、本文に即して具体的に説明せよ。
本問は「本文に即して」と「具体的に」という二つの条件がつけられている点で特異な出題である。傍線部イの直後に「たとえば」で始まるふたつの文章があるため、具体的な名詞などを温存しながらそれらを要約すれば解答ができる。
それは、「たとえば、 clairière(クレリエール)という言葉がある。これは『明るい、澄んだ、透けた』を意味するclairという形容詞からくる言葉で、森の中の木のまばらな空き地の部分や布地の薄い部分をあらわす。それまでただの『ひらけた土地』でしかなかった場所は、この言葉を知ることで、木々の葉を透かして空き地を照らす陽光のまばゆさと結びつくようになった。」という2文である。
傍線部は「世界の見方が変容する経験」となっているので、言葉に関する新しい感覚が身に付いたということだと考えられる。
以上から、「クレリエールという単語とその派生元の単語の関係を知ることで、ただの開けた土地から森の中の陽光を連想できる感覚が身に付いたということ。」(66字)といった解答例ができる。
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