
吉田太郎著 シン・オーガニックを読む
土づくりは農づくりを標ぼうしている身として、普段から土とつくものを気にして生活している。本は特に。
デイビッド・モントゴメリー著 『土の文明史』、『土と内臓』、『土・牛・微生物』、『土と脂』(読んでる途中)や、ゲイブ・ブラウン著『土を育てる』など、雷に打たれっぱなしで読んだ。知の宝庫だ。
植物の根と腸の活動との類似性。菌根菌や微生物叢(マイクロバイオーム)が植物の栄養循環にどれだけ貢献をしているか、そして共生関係にあるか。カバークロップ・不耕起・混作によって微生物叢が豊かになり土中の炭素貯蔵量が増す。光合成産物(=単糖類)が滲出液となり、微生物の食料となってさらに根圏が豊かになる(炭素循環)。根圏が豊かになると肥料・農薬に頼らなくてよくなり、保水性も増す。(総じてリジェネラティブ農業)
自分たちの農場ではどこまで実践できているか?いま挙げたものの中では、菌根菌を粉衣したり、葉面散布したりするくらいだ。
なぜ実践できていないか?先ずもって機械設備が理想に追い付いていない実情。有機農業をされてる方もほぼいない地域で、有機や自然農法や不耕起やーなどまわりの農業者の理解も必要となってくるだろう。そして何よりも、温暖湿潤ゆえ気候の再生力の強さが、かの著書で書かれているアメリカやヨーロッパの気候と比べ悪条件に働いてしまうのでは、という心配で二の足三の足を踏んでいる。
吉田太郎著『シン・オーガニック』はそんな私の心配をひらりとかわし、日本の農業の進むべき未来像を雄弁に語ってくれる。
最先端の科学が解き明かしつつある土壌の共生関係に、日本の大地再生農業の先駆者たちはとっくの昔から気がついてて、日本の気候にあった再生農業をすでに実践していたのだ。
地球史からアグロエコロジーにつながっていく『シン・オーガニック』は、デイヴィッド・モントゴメリーの4部作や、ゲイブ・ブラウン『土を育てる』の間をとってくれる立ち位置だ。本書から読み始めるのが一番おススメ。農業者であればスイスイ読めると思う。窒素を施肥をすることで、土壌中では逆に窒素飢餓が起きている話など驚きを通り越して感動してしまった。
やれ機械設備が無い、日本の気候には合わないと泣き言を言った私だが、『シン・オーガニック』を完読したことで、この春からさっそく戸頭農場で実践してみたいことがどんどん出てきた。写真の付箋がそれである。
新たに実装した知識と今までの農業経験を補完していけば、脱化成肥料・脱農薬、不耕起や被覆作物が繁茂し、モノ・カルチャーではなく混作が当たり前となった、新潟の気候に合う再生農業に近づくはずだ。