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金子文子と朴烈

(⚠︎永遠の0とかが好きな人は読まない方がいいです。)


[左:朴烈、右:金子文子]刑務所で撮られた実際の写真



このノンフィクション映画は、メジャーな映画館では上映されずマイナーな小さい映画館でしか上映されなかった。

私が観に行ったときも、観客は10人もいなかった。

なんでかというと、主人公のふたりは天皇制に反対し、暗殺を計画して大逆罪になり死刑判決をうけた人間だからだ。
あとから無期懲役に減刑されたが、金子文子は23歳の若さで刑務所の中で死んだ。(自殺か他殺かはいまだに謎)
そんな内容なので、大手の映画館では上映できるわけがない。


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主人公は、女で日本人の金子文子と、男で朝鮮人の朴烈の二人だ。両極端な二人は惹かれ合い、固い絆を結んだ。


わたしは、金子文子に強く心を惹かれた。

金子文子は、恵まれない幼少時代を過ごし、日本帝国主義の歪んだ世の中に反感を覚え、社会主義者•アナキストとなる。その活動をするなかで同じ思想の同志である朴烈と出会い、深く共鳴しあい、恋人として同棲生活を送ることになる。

社会主義ということは、みな平等という考えが基本だ。だから、ふたりは、女も男も同じ立ち立場(1920年代ではほとんどありえないことだった)であることを、誓っていた。

朴烈が金子文子を女扱いをしたら、同棲生活を即解除するという掟まで作っていた。
その時代はまだその言葉は存在していなかったが金子文子は立派なフェミニストだった。


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金子文子の人生を一言でいうならば、一貫して体制に反抗した人生だった。

日本の植民地主義に反対し、反政府主義を掲げた行動を起こしたことで、投獄され大逆罪で死刑に処されるという判決を受ける。


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終戦から70年経った現在でも、隣国と日本は戦後処理について、こじれにこじれている。

若い世代には、なぜ、自分たちが戦争をした世代でもないのに、戦後処理の責任をもたなくてはいけないのかと反感を持つ人も多いと思う。長い年月がたった今、終わったことをほじくり返さなくてもいいんじゃないかと。



だけど、経済発展に注力していた前の世代がいたおかげで、私たちは、いまある富を享受できている。

今までの世代は経済発展に重きを置いていたので、戦争責任についておざなりになっていた部分がある。(反対意見は多いが)


私たちの世代には、そのおざなりになっていた戦争責任を果たす義務があるとわたしは、思う。


現代で、過去の、この国の暗い部分について、反省側に立つ人間はどれくらいいるのかわからない。
でも、ヘイトスピーチなどが含まれていなければ、言論の自由が守られている現代だから、どんな意見をもってもいい。多様な意見をうけいれられる姿勢でいたい。


でも、もしかしたら今でも言論統制の名残りがあるのかもしれない..

[ちきりん/言論の自由は今でも命がけ]


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この映画が、えがきたかったのは、日本の過去の蛮行をあげつらうことではなく、

日本の植民地主義に反対し、大きな力をもつ権力に反抗した、力をもたない市民の姿だ。


私は、どこかの国、政府、団体に肩入れすることはない。


村上春樹の有名なスピーチで「壁と卵」というものがある。


 「高く、堅い壁と、それに当たって砕ける卵があれば、私は常に卵の側に立つ」



私もこの意見に賛成する。

どこの国かや、どの政府かなどは関係なく
抑圧される弱い立場のマイノリティと、抑圧する側の権力のマジョリティがあれば
わたしは、いつでも、弱い立場のマイノリティ側に立っていたい。

傷つける側になんかなりたくない。


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この映画にはもう一つ主題がある

民族差別である。


この映画の舞台である1923年東京では、関東大震災があった。

今までにない大きな地震で町は破壊され、市民は、混乱していた。混乱すると市民の不満は政府に向かう。それを阻止するためにだろう、まったくのウソであるデマが流布された。


「朝鮮人が井戸に毒を入れた」


....
そのデマが流布された直後、自警団という名の日本人のふつうの市民たちが、名もない朝鮮人を次々と刺し殺した。
関東大震災における朝鮮人虐殺事件では、「わかっている限りで」6000人以上の罪がない朝鮮人が理由もなく、殺された。


お上の人間が、市民の鬱憤をぶつける下層の存在を作ることは、世界の歴史で見れば珍しいことではない。

カースト制度や、えたひにんなど、大多数の市民たちより、少数の低い階層をつくることで、鬱憤を政府(権力側)にぶつけることなく、鬱憤を下の階層(差別される側)にむけることができるので、政府の政治決定などがスムーズに通る。
お上の存在への反発が起こるのを、権力側はいつも恐れていた。


そんなのって絶望する。そこまで人間の心って汚くなれるものなの?


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私がこの件に深く興味をおぼえるのは、
現代の日本で、右傾化と排外主義が無視できないくらい大きくなっているとおもうからだ。

書店の新書ランキングでは、反中、嫌韓の本ばかりが並ぶ。テレビでは、「日本スゴイ!」と外国人に言わせる番組ばかりが流れる...


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[映画に関連した本]

おどろくことに、金子文子が牢獄の中で書いた獄中手記が出版されていて、彼女が書いた文章を読むことができる。
一貫して体制に反抗した金子文子の一生。かっこいい。




もし、金子文子の背景についてしりたいひとがいたらよんでね
http://www.kaminotane.com/2018/05/10/2502/


[後記]

金子文子が苦学生として、新聞売りで働いた場所が上野にある。いまでいえば、上野松坂屋のあたりだ。

この映画をみた翌日、すごく感銘を受けた私は、気がついたら上野松坂屋に立っていた..

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