読書感想文 アガタ・クリストフ 『悪童日記』
こんにちは!
私は子供の頃から読書が苦手で、夏休みの読書感想文を書くのもかなり苦労していました。大人になってもあの時できなかった自分がいつも心に引っかかっていて、今更ながら読書に挑戦してみることにしました笑
最近は毎朝1時間読書時間を取っています。そして本を読み終ったら感想を書いてみることにしています。拙い文章ですが、アドバイスなどいただけたら幸いです。
私は読書が好きではない。そのため私が好きな本は数冊しかない。しかし今回読んだ「悪童日記」はそのうちの一冊になった。選んだきっかけは単純で、私が好きなジブリ映画の監督・宮崎駿の推薦図書だからだ。
この本の舞台は第二次世界大戦中のハンガリーである。主人公の双子は戦火を逃れるため、意地悪な祖母に預けられる。少年たちは祖母からのいじめ、町の人々からの差別や虐待など理不尽に耐えながら生き抜いていくという物語だ。
まず、読書嫌いの私がこの本を難なく読めたのは、その文体のおかげだ。原書のタイトルは「Le Grand Cahier」(大きなノートブック)であり、題名の通り少年たちがノートに書いた日記として日々の出来事が綴られている。彼らは日記を書くときのルールとして、自分たちの感情を一切排除し事実だけを書くことにしている。例えば、「祖母は魔女のようだ」と書くのではなく「祖母は町の人から魔女と呼ばれている」と記すようにしている。このように一貫した客観的な文体のおかげで、悲惨な戦争体験を過度な感情移入なくさっぱりと読むことができる。
そして、この本の最大の魅力は少年たちの逞しさだ。本を読む前はよくあるお涙頂戴物だろうと思っていたが、冒頭から彼らの生きる力に度肝を抜かれた。確かに待っているのはつらい現実なのだが、少年たちの今を一生懸命生きる姿勢は現代人が見習うべきエッセンスがたくさん詰まっている。暴力で泣いた日があれば、お互いを殴り合い強靭な肉体作りをした。騙された時は、勉強して大人顔負けの雄弁術を身に着けた。どんな辛い状況でも悲観することなく、どうすればよいのか考えてそれを淡々とこなす。この姿勢は、不平不満ばかり嘆く私のような人間にまさに必要な能力だろう。
しかし、双子は自分たちの正義や目的のためなら恐喝や盗み、殺人も厭わない。ある時少年たちは連行されるユダヤ人に罵声を浴びせている教会の女中を見かける。彼女に風呂や洗濯で世話になっていたにも関わらず、彼らは彼女を殺害した。その後も祖母の殺害などショッキングな事件が続く。前述の通り感情の描写がないため少年たちの心の変化は読者が読み取らなければならないが、この歪んだ倫理観の背景に彼らが子供らしく成長できなかった戦争や家庭環境が少なからず影響していると私は考えている。実際作者のアゴダ・クリストフは21歳の時ハンガリー動乱の折に4ヶ月の娘を連れて亡命した。難民先のスイスでは生活のため工場労働に従事する傍らフランス語で執筆活動を始めた。「文盲 アゴタ・クリストフ自伝」を読めば彼女の亡命先での体験が小説に反映していることがよくわかる。小説に登場する子たちの行き過ぎた行動を通して、作者は子どもたちが健やかに生きていける平和な世の中を切望していることが私には伝わってきた。
本書には宮崎作品と共通するものがある。戦争による痛みや悲しみ、そんな中でも負けずに生きる子どもたち、いずれも平和な世の中にすっかり慣れた私たちに歴史の重みを教えてくれる。