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一般政府の財政赤字、コロナ禍前より縮小~2023年度国民経済計算年次推計

 GDP統計(国民経済計算)の年次推計が昨日(23日)公表されました。年次推計では、より詳細な基礎統計を用いてGDPが推計されるほか、家計、企業、政府などの懐具合の詳細データなどが公表されます。今朝の日経では、年次推計公表の際に毎回公表される1人あたり名目GDPの国際比較を取り上げています。本稿では、一般政府(国、地方、社会保障基金の合計)の財政赤字に注目します。コロナ禍前で最も赤字が少なかった2018年度より縮小し、現行基準のデータで遡れる1994年度以降で最小になったためです。

一般政府の資本調達勘定の「純貸出(+)/純借入(-)」が財政収支に相当

 GDP統計で財政収支動向を確認するには、一般政府の資本調達勘定の「純貸出(+)/純借入(-)」の項目を見ます。財務省の資料では、この項目の名目GDP比が国際比較に用いられています。この項目は、税収・社会保険料といった一般政府の収入から社会保障費などの支出を差し引いた貯蓄(ここまでの流れは所得支出勘定で確認できます)から、公共投資などを差し引いた残りです。

2023年度の財政赤字は前年から半減

 下の図は「純貸出(+)/純借入(-)」の名目GDP比の長期推移を描いたものです。青色の折れ線グラフが「純貸出(+)/純借入(-)」の名目GDP比を表していますが、2023年度のマイナス1.9%が現行基準で遡れる1994年度以降でもっとも赤字が少なくなっていることがわかります。コロナ禍前は2018年度のマイナス2.4%が最小でしたが、それよりも赤字が少ないです。
 この赤字縮小には分母である2023年度の名目GDPが4.9%と高い成長になったことも貢献していますが、金額で見ても最小になっています。2023年度の「純貸出(+)/純借入(-)」はマイナス1.1兆円で2022年度のマイナス2兆円からほぼ半減し、2018年度のマイナス1.3兆円よりも赤字が少ないです。

政府支出の名目GDP比がコロナ禍前水準に

 上の図を見ると、最近の財政赤字の主因は黄緑色で示される公共投資額ではなく、それ以外の歳出(社会保障など)と税・社会保険料収入のバランスである「一般政府の貯蓄(純)」要因であることがわかります。そこで、貯蓄(純)の要因を収入面(税・社会保険料収入と財産所得(純))、支出面(公共投資を除く政府支出)に分けて2018年度と2023年度を比べると以下のようになります。税・社会保険料収入の増加だけでなく、財産所得(純、受取-支払)の増加も赤字縮小に貢献したようです。この間、利子支払いなど財産所得(支払)が6274億円減った一方で、利子受取、配当などの財産所得(受取)が2兆6232億円増えました。
 コロナ禍で大きく上昇した公共投資を除く政府支出の名目GDP比も34.4%とコロナ禍前の水準まで低下してきたことも財政赤字の縮小に寄与しました。

単位:兆円        2018年度  2023年度
税・社会保険料収入     173.8    193.0  +19.2
財産所得(純)       ▲0.9     2.4  + 3.2
公共投資を除く政府支出   187.2    204.5  +21.5

国・地方のプライマリーバランスの赤字は名目GDP比2.1%に

 年次推計の「一般政府の部門別勘定」を見ると、国(中央政府)、地方(地方政府)、社会保障基金別の財政状況がわかります。今年7月に公表された「中長期の経済財政に関する試算」(内閣府)における2023年度見込みでは国・地方のプライマリーバランスの実績見込みは名目GDP比で2.9%でしたが、実績では2.1%でした。金額では実績見込みがマイナス17.1兆円であったのに対し、実績はマイナス12.5兆円でした。政府の見込み以上に財政が改善してきていると言えるのではないでしょうか?

#日経COMEMO #NIKKEI

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