ベアー
「ただいまー」
「おかえりー」
玄関の電気をつけます。暖色系。帰ってきても心が冷えてしまわないように選びました。
遠くから聞こえるこの声は私の全てを癒してくれるんです。
「あー、もー。今日も疲れちゃったよ~」
「とりあえずビール!」は一ヶ月ほど前から辞めました。
理由は・・・。ちょっと体重が・・・って何言わそうとしてるんですか!
今は、部屋のソファにダイブしてクッションに顔をうずめ外から持ち込んだ外の気を落ち着けてます。
「毎日お疲れ様です」
はぁ~。この一言のために毎日頑張ってるわ、あたし。
段々と落ち着いてきたので、ビールを迎えるために冷蔵庫に向かいます。
いざ、飲酒。っと缶を開けようとしたら昨日の残り物が目に飛び込んできたので、見なかったフリをしようと思ったんですが、食べてやります。
というわけで。いざ、飲酒!いらっしゃいませ、アルコール!
「ちょっと聞いてよ。今日ね、課長に会議の資料まとめといてって言われて、まとめたんだけどね。ホチキスを逆にとめちゃって、これじゃあ読みにくいだろって怒鳴られちゃって・・・」
「もー、小さい頃からそのおっちょこちょいはなおらないのよね。しかも、先月も同じミスしちゃって怒鳴られちゃったって人知ってるんだけど、どこの誰だっけなあ」
「え、先月もあたしやっちゃってた?」
「あちゃ~」
彼は呆れた様子で、おでこに手を当てました。
「まぁ。〇〇ちゃん頑張ってるもん。ふんぞりかえって、対して頑張ってない人なんかに言われたくないよね」
「そう!その通りなのよ」
「特に・・・」
「課長!」
声揃っちゃいました。もうこんな時間なのに。
声が大きいと近所の人に迷惑なのに、ふたりとも楽しくておかしくて。
外で笑顔になれないぶん、家の中だけでも笑顔でいさせてください。
いいですよね。それくらいの贅沢。
そーなんです、あたし最近気付いちゃったんです。笑顔でいれるのって、ものすっごく贅沢なことだと思いませんか。
あたしはこの贅沢に気付いてから、少しだけ多く幸せを感じられるようになりました。
あたし「贅沢」って言葉大好きです。
人を「幸せ」にすることが出来る。魔法の言葉だと思ってます。
あたしは日々、たくさんの贅沢をして、たくさんの幸せを思い出して、眠りにつきます。
思い出し笑いで、顔がにやけたままかもしれないですけど。
いやだぁ、ほうれい線が深くなる~。
まぁ、こんな悩みが言えるのも贅沢なんですけどね。
あたしの隣で眠る彼には魔法をかけてもらってばっかりです。
あたしも一つだけ、魔法をかけることに成功したんですけど・・・。
ごめんなさい。
こんな贅沢、人様には言えませんね(笑)。
今宵も素晴らしい夢に連れて行ってね。
あたしは幼い頃から、彼を抱いて眠っているんです。