迷宮なしの名探偵、その名は…
「お弁当、何食べたい?」
学校行事を控えた娘に聞いたら、帰ってきた答えが
「江戸川コナン!」
だった。
おい、急にどうした、アンパンマンも作ったことのない母に、そんな難易度の高いものを要求するような娘ではなかったはずだろ?
私に出来るキャラ弁といえば、奮発してすみっコぐらしのかまぼこを捩じ込むぐらいだ。
「ええ?それは無理だよ、せめて黒の組織を表現するのり弁ぐらいしか…」
いや、のり弁で黒の組織を表現したところで、理解してくれる小学生があろうか?
「何言ってるのお母さん?無理なわけないじゃん、お母さんも好きだよね?」
「や、好きだけど、好きと作るは違うでしょ」
「ん?お母さん、なんのこと?」
「江戸川コナンのキャラ弁」
噛み合わないはずだった。
娘が所望していたのは「枝豆ごはん」だった。
娘は、名探偵コナンが大好きだ。
アマゾンプライムで永久かな?という勢いで見ている。
過去の劇場版コナンも一部無料配信が始まったので、一日一映画の勢いで観ており、『名探偵コナン黒鉄の魚影(サブマリン)」は、公開日を目にするたびに「お母さん!絶対行きたい!」と言われ続けた。
正直なところ、映画館で観るほどではなかろうよと。
1年経つか経たないかのうちに、金曜ロードショーで放送されるし、あれだろ?
数億円規模の爆発が起きるんだろ?
「らーーーーーーーーーん!!!」つって
「オメーーーーラ逃げろぉぉぉ!!」つって
「いっけーーーーーーーー!!」っつって
「お前一体…?」
「江戸川コナン…探偵さ」
で、最後に
「もう!どこ行ってたのコナン君!」て蘭姉ちゃんにギュッてされて
「バーローずっと一緒にいたっつーの」って新一ボイスとコナンボイスでフィニッシュだろ!?
そう、この流れを一通り全部セリフで言えるほど、お母さんもハマっている。
枝豆ごはんが江戸川コナンに聞こえるほどには。
4DXで観ようじゃないか!
そんなわけで、4DX。
すごかった。画面に合わせて席が揺れるし風はくるし水飛沫は当たるし、エアーも飛ぶ。
麻酔針が刺されるシーンで、「ヒャ!」と声を出してしまって娘に「しっ!」って怒られた。
実は二度目の4DXなのだけど、前回は1人で鑑賞していたため、感情を抑えるのに必死だった(鬼滅の刃無限列車編)。
今回は、若干怖がっていた娘を盛り上げようと、いささかはしゃぎ気味ではあったのだが、後半は、娘がいるいないに関わらず興奮(もちろん静かにしていたけど)。
年々規模が大きくなっているコナン君の事件。
もはや推理や探偵の枠をこえ、起こっているのは国際テロ。
そこに立ち向かってるコナン君、小さくなっちまった!って言ってるけど、大きかったとしても高校生。
蘭ちゃんの、組織に立ち向かう異常なまでの戦闘力の高さも、空手部を超えて軍事訓練を受けていると思われる。
帝丹高校って、なんらかの養成所なのでは…?鈴木財閥も絡んでるしな…。
などと、アニメを相手に、何度つっこんだかしれないのだが、とにかく規模がとてつもない。
これは…内容を理解できている?
不意に不安になって、FBIが動き出すシーンに娘を覗き見すると、それはもう真剣であった。私の視線に気づかないほどに。
座席が揺れる。光が放たれる。
その瞬間も、1秒たりとも油断していない娘。
そう、今、彼女もまた、国際的な黒の組織と戦っているのだ。
連れてきて良かった。こういうのって、大人になっても忘れないもんなんだよな。
そう思いながら映画館を出た。
「面白かったねー!めっちゃ光ってたねー!すっごい揺れたねー!」
興奮しているのは、俄然私の方だった。
娘は「うん…」と何かを考えている風である。
「怖かった?」
ううん、面白かったよ。
いまいち反応が悪い。
あれ。めちゃくちゃ喜ぶ顔を期待していたのにな…と、なんだか急に心が萎んだ。
映画の感想なんてそれぞれだし、私が面白かったからと言ってそれを必ず共有するものでも、面白かったでしょと強制するものでもない。
それはよくわかっているつもりだけれど。
すると、娘が言った。
「開いてはならないパンドラの箱って言ってたけど…いつ箱出てきた…?」
いや、比喩表現…!!!
どうやら、彼女は、コナン君ばりに推理をしていたらしい。
どこかの段階で必ず現れるであろう『箱』をずっと探していた。
出てこないやん『箱』。誰か勝手に開けたんじゃないのか『箱』…。
コナン君、『箱』どうした、探さんでいいんか。
ちゃんと説明してあげたいような、あげたくないような。
パンドラの箱にまだ出会ってない彼女のままでいてほしいような、それぐらいは知ってて欲しいような。
ざっくり説明すると、納得したらしい、晴々とした笑顔で4DX最高!と言っていた。
お小遣いで、コナン君と灰原哀ちゃんが描かれている下敷きを購入し、それを胸に抱いて帰った。鼻歌漏れるコナンテーマ。
ありがとうコナン君。
また楽しい思い出が増えちまった。
たった一つの真実見抜く見た目は緑、頭脳は大豆!その名は、エダマメゴハン!
まだまだ、しばらくコナンで盛り上がれそうな我が家でございます。