トコラ版そねざき心中 #4 食品会社(醤油屋)の姪
近松門左衛門作 =曽根崎心中=
を現代語訳・・・というか、近未来SF化して上演を試みています。
場面ごとの上演テキストを順次公開しようと思います。
現代語訳に相当するものと、
原作に登場しない人物のものとあります。
引用した原作の場面を、下に原文引用として記載しています。
「トコラ版そねざき心中」については、
作品紹介記事をご覧ください。
食品会社(醤油屋)の姪
原作には登場しませんが、
「#2 トク(徳兵衛)結婚話の説明」で語られている人物です。
ハーちゃん、こんにちは。
この手紙は読んだらすぐにシュレッダーしてくださいね。
トクくんは、おじさんに私との結婚を断ってきたそうです。
ゆうべ、おじさんの家の灯が遅くまで点いていました。
今朝、おばさんが家に来て、お母さんと二人並んで私に、
結婚がなしになったことを言いに来ました。
本当に良かったです。
トクくんがずっと気づかずにいたら、何も知らされずに結婚式場へ連れて行かれていたかも知れません。
調べたら、うちの名で4月の予約が入っていました。
お母さんは、ハーちゃんのことは知らなかったようです。
おばさんから聞いて驚いていました。
ハーちゃんは、うちのお母さんに会ったことはなかったかしら?
ハーちゃんが家に来てくれたときに会っているはずなのだけど。
まさか、中学時代のクラスメイトが、トクくんの恋人だなんて
想像もしないでしょうけどネ。
おじさんはすっかり怒ってしまって、トクくんはクビ。
私の持参金として彼のお母さんに渡した3千万円を返せ、
この街の土は踏むなと言って追い出してしまったそうです。
お金なんて自分で取りに行けばいいのにね。
トクくんのおかあさんはガメツイ人らしいので、すんなりお金を渡すか心配です。
ハーちゃん、お願いがあります。
私も来年成人したら法律上、お金を自由に動かせるようになります。
そうしたら、ハーちゃんが職業を自由に選択できる権利金を
私に建て替えさせてくれないかしら?
そうしたら、はーちゃんも今の仕事やらなくて済むでしょう?
そうしたら、トクくんと自由に結婚もできるでしょう?
お嬢様の気まぐれだなんて思わないでくださいね。
中学校でいじめられて、学校に行けなくなった私の家に毎日迎えに来てくれて、
一緒に登校できるようになった時は本当に嬉しかった。
クラスのアイドルだったハーちゃんが、どうして私と仲良くしようとするのか、
とても不思議でした。
私の家が裕福だから?
ただの憐れみ?
人気取り?
先生に頼まれたから?
でもね、ハーちゃんを信じようと思えたのは、私と一緒にいるときのハーちゃんは本当に楽しそうだったから。
ハーちゃんの笑顔が、死のうと思っていた私を助けてくれたのです。
だから、お願い。今度は私に、ハーちゃんを助けさせて。
絶対に、死のうなんて思わないでください。
お願いします。
上演記録映像です。
イベント時間枠の関係でややカットしています。