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我が家に引き寄せられる中華まん

母に中華まんブームがきた。
ずっと使っていなかった蒸し器で市販の中華まんを蒸したところ、レンジで温める時の何倍もの美味しさになった。
特に生地がふわっともちっといい食感になる。

それにハマった母はスーパーで違うメーカーの中華まんを探しては蒸すというのをここ最近していた。
そのブームにちゃっかり私もハマってしまって、一緒に食べ比べを楽しんでいる。

そんなブーム真っ只中のとある日の夕食。
その日も母が中華まんあるよと言ってきたので、「食べる」と私は即答。

すると、すぐに「新しい中華まん買ったけど食べる?」と私に聞いた母。きっと母はその新しい中華まんが食べたかったのだろう。今日初めて買った中華まんはボリューミーな大きさで、1人で食べるには少し多いなと思ったのかもしれない。だから私が食べると言って直ぐに蒸し始め、母はこの時を楽しみにしていたのだと私は思う。

中華まんが蒸し上がり、案の定母はその中華まんを半分に割って母と私で半分こ。
私にとっても半分こがちょうど良かったので結果的にお互いに合意ができた形になった。

熱々の中華まんを手に取る。

生地がふわっふわ。

「前に食べた中華まんに比べて今回はなんてふわふわなんだ!」

最初の一口目は何もつけずに食べるのが私は好き。

ぱくっと。
生地がふわっともっちり。
甘味のある生地は私好み。
中身の具もシンプルな具材で味も濃すぎず、良いバランス。

この瞬間、歴代のスーパーで買った中華まんの中で暫定一位となった。
(まだ3種類ぐらいしか食べてないが。)

中華まん評論を母と話しながら肉まんを頬張って、お腹も満たされ満足した私はゆったりモードに。

しばらくして父が帰ってきたようでキッチンへ行くと、そこには赤い箱を持った母がいた。

母「ねぇ見て」

なになにと箱を覗き込むとそこには、中華まんがいた。

さっきも会った中華まんがそこにはいた。

それは、父がお客さんから貰ってきた中華まん専門店の中華まんだった。

箱の中には一個しか入っていなく、一個は既に父が仕事場で食べていた。

「専門店の中華まんなんて食べたいに決まってるじゃないか!」
なんていうタイミング…
さっきあんなに満足気に肉まん食べてしまったことを後悔していた。

そんなことを思っていると、
母はその箱の蓋を閉めてこう言った。

「これは明日ママが試食しておくから感想伝えるね。」

と躊躇なく一個の肉まんを分け合わない宣言をした母の言葉は清々しかった。
そんな清々しく言われたら私は妬むこともなかった。

「どうぞお食べくださいな。」

世間も肉まんブームなのかと思うぐらいわが家に肉まんが引き寄せられてきた。

引き寄せの法則は食べ物も引き寄せるんだなと実感した日だった。

そして後日、母が中華まん専門店の中華まんを食べた感想を言ってきた。

「やっぱり全然違うわね。専門店の中華まんが一番美味しかった。」
一瞬にして父がお客さんからもらってきた中華まん専門店の中華まんが一位の座になった。

「やっぱりそうだよなー。」

スーパーのチルドの中華まんの味しか知らない私は、その中華まんを食べられなかった悔しさとスーパーの中華まんの感動をまだ知ってる自分がぶつかり合いなんとも言えない感情になった。

その日を境に母がスーパーで中華まんを買ってくることはなかった。

お客さんから貰った中華まんをきっかけに我が家の中華まんブームも終わりを告げることとなった。


とぅぶ

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