⑦巡礼事務所

　町、というよりかわいい街、だった。バスク地方特有の赤レンガと白い壁、道端の小さなお花が涼しい。緩やかな石畳の上り坂の途中に巡礼事務所があった。ここで巡礼登録をし、説明を受けた後にクレデンシャルをもらう。クレデンシャルは申請をすればその国々のオリジナルをその土地で受け取ることができるし、巡礼はどこから始めていつどこで終わっても良いので必ず事務所に行く必要はないが、私はここから始めることにした。とにもかくにも自由な旅なのだ。
　フランス人の道は初日が一番の難関といわれるルートで、明日は「ピレネーを超えたらそこはアフリカ」とナポレオンが言うナポレオンルートと、国道沿いを行くルートがありどちらで行くか迷っていた。しかし残雪の影響でピレネー越えは危ないと説明を受け、明日の巡礼ルートが決まった。事務所を出て今夜の宿探しをしようかなと考えながらとりあえず記念写真を撮っていると、駅で見かけたご夫婦の奥さんに声をかけてもらった。