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①レールの外

 きっと必ず、私はここに帰ってくる。次は大切な人と一緒に。
 1か月前、パリの見知らぬ空港で、しかめっ面のフランス人に気付かれないようひっそりと泣いていた私はもういない。
 聖地巡礼をしよう!
 そう思いたった大学4年生の春、5分後には数日後に迫った合同説明会の予約をキャンセルしていた。学生と社会人の狭間、多くの学生がそうであるように私もまた、人生の迷宮でため息をついていた。そんな生活の中で出会った「聖地巡礼」。もともと旅好きの私を就職活動のレールからドロップアウトさせるには、十分すぎる言葉だった。
 次の日にはYouTubeで先人たちの動画を見あさった。友達が就職活動に勤しむ中、私はアルバイトに明け暮れた。ガイドブックやウォーキンググッズ、そして大本命のバックパックを購入し、私の聖地巡礼バックパッカーが始まった。

 4月上旬、同級生が会社へ初出社する頃、私は地元の空港で家族からの見送りを受けていた。人生で初めて妹から抱擁を求められた。ようやくこの時、これから自分がしようとしていることの大きさに気付かされた。何といっても私、今回が初1人海外なのである。おまけに、決まっているのは約2か月後の帰りの飛行機のみ。不安8%、わくわく92%。「若さは武器」とは正にこのことだと実感した午後13時の飛行機なのだった。
 お昼から1時間そこらで東京へ。夜中に日本を出発し、まずはトルコへ。そこで4時間ちょっとの時間をはさみ、いざパリのシャルルドゴール空港へ到着する手はずである。
 何といっても一番の難関は「乗り継ぎ」だ。
私はぼんやりとそんなことを考えながら、世界への小さな一歩を踏み出した。

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