赤い帽子を被ったおじさんと背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負ったカメ
これは世界で最も有名な赤い帽子を被ったおじさんと背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメとの間で起きた1人のお姫様をめぐる物語。
W-1 〜姫の誘拐、その犯人とは〜
ある日、住人のほとんどが同じ顔の王国で、桃のようなお姫様が誘拐されるという事件が起きた。
一国のお姫様が誘拐されるという大事件が起きたにも関わらず、その王国はなんと知り合いの赤い帽子を被ったおじさん1人に姫の捜索を押し付けたのだった。
ただ堂々とした誘拐だったため、当初より誘拐犯の目星はついていた。犯人は背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメだった。その犯人はカメでありながら口から炎を吐き、壁や床を壊すかなりの暴れ者だった。
そのカメは悪の軍団を率いていた。赤い帽子を被ったおじさんがお姫様を助けに来るのを邪魔をしようと、いたるところに手下を待ち構えさせていた。
W-2 〜冒険が始まる〜
赤い帽子を被ったおじさんといえば時折ものすごい勢いで走る事はあるが、実際は急いでお姫様を助けに行く事はしなかった。何日もかけ、海とか、砂漠とか雲とか、氷とか、なにかと自然に偏りのある国々を漫遊してからお姫様を助けに行った。
キノコや葉っぱを採取する事も多いので自然化学関係の人かと思っだが本当の職業は配管工らしい。しかし、落ちてる小銭を拾い集める所を見るとあまり仕事がうまく行っていないのかもしれないし、冒険にはお金がかかるのかもしれない。
道中では、栗のような兵隊やとても勢いよく転がる不思議なカメ、時には恥ずかしがり屋のおばけなども出てきたが、実際は邪魔をする気があるのか無いのかわからない。ただ散歩しているだけにも見えた。
W-3 〜ついに姫の待つ城へ〜
あっという間に最後の冒険となった。赤い帽子を被ったおじさんは背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメの所有するとても立派なお城にたどり着いた。
そのお城は、所々の床が崩れやすかったり、通路が狭かったりと少し生活するには不便そうな作りだった。また、床暖房の機能かはわからないがマグマのようなものが床に敷き詰められていたのでデニム生地のズボンではかなり暑かった。
赤い帽子を被ったおじさんは明らかに他人の所有物であるにも関わらず、いつもの調子で城の中の小銭を拾いながら奥へと進んで行った。
W-4 〜最後の戦い〜
奥へ奥へと進むと一本の吊り橋のような所に背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメが待ち構えていた。
赤い帽子を被ったおじさんの体の何倍もの大きさのそのカメは物凄い雄叫びをあげ、口から炎を吐き襲いかかってきた。このカメの向こうにはきっと桃のようなお姫様が待っている。あと一歩で助けれるという所まで来ているのだがここからが一筋縄ではいかなかった。
どうしても倒し方がわからない。手下の8割くらいは踏むだけでやられてくれた。その他の踏んでも倒せそうにない手下に出会った時には、せっかく登場してくれたにも関わらず横をただ走り抜けてきた。
しかし、このカメは大きすぎて踏む事ができそうにもない。かといってこの吊り橋は狭く簡単には通してくれそうにもない。橋の下にはマグマのようなものが煮えくりかえっている。
基本的に踏む以外の攻撃を知らない赤い帽子を被ったおじさんはジャンプしても届かない相手には手も足も出なかった。口から吐く炎をただオロオロと避けていた。避けた炎が後ろの壁をどんどん壊していく。
W-5 〜勝利への法則〜
赤い帽子を被ったおじさんは何度も何度も口から吐き出される炎を避けているうちに、一つの違和感を覚えた。
なぜかこのカメは2、3回炎を吐いたあと必ず意味も無く高くジャンプをする。
そして、そのジャンプをしている時に橋の向こう岸に『どうぞ踏んでください。』と言わんばかりの大きなスイッチが見えた。
ここでまたも閃く。
もしや、あのスイッチを踏めばこの吊り橋を破壊し、このカメを下のマグマのような所へ落とすことができるんじゃないか。
しかし、ここで懐疑の念が押し寄せてくる。果たして黙って立っていれば通れないのに、わざわざ通れるようにジャンプをするだろうか。はたまた、自分で建てた城にわざわざ吊り橋が破壊される仕組みを作るだろうか。
これはもしや罠なのか?
いくら考えても答えが出ず、時間だけが過ぎでいったその時、城の中でなぜかソワソワするような不吉な音楽が流れて来た。まるで時間が切れると死んでしまうのではないかというような錯覚に陥った。
W-6 〜最終決断〜
もう行くしかない。たいして速くない炎を三度避けた。次の瞬間、赤い帽子を被ったおじさんの予測を裏切る事なく、巨体が意味も無く宙に浮いた。
今しかない。Bダッシュ!!
高く浮かび上がった巨体の下を駆け抜ける。もし背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメの体に触れてしまえば、急激に背が縮むかもしれない。しかしなりふり構わず駆け抜けた。そしてついに黒いスイッチを踏んだ。
ジャンプして踏む。ジャンプしては踏む。仕事はせずともその動作だけは毎日、何百回と欠かさず繰り返してきた。あらゆる生き物達を踏みつけてここまでたどり着いた。そしてその成果をここでいかんなく発揮した。
まさかとは思ったが、吊り橋は音を立てて崩れ落ち、背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメは皮肉にも自分の城の仕掛けによってマグマのような所へ落ちていった。
ついに赤い帽子を被ったおじさんと背中にトゲのついた珍しい甲羅を背負った大きなカメとの闘いに幕が下りた。
W-7 〜運命の再会〜
赤い帽子を被ったおじさんはついに桃のようなお姫様を見つけた。彼女は長い間、監禁されていたにもかかわらず衰弱している様子もなく、ドレスに汚れ1つなかった。
よくよく考えると度重なる誘拐により、この城へ来たのも1度や2度ではない。彼女にとってはもはや繰り返し利用する慣れたホテルに宿泊する感覚だったのかもしれない。
また身なりも綺麗でとても健康そうな事から、かなり丁重に扱われていた様子が伺える。きっと一国の王女である彼女の生活水準を維持するのにかなりの生活費を費やした事だろう。
赤い帽子を被ったおじさんは無事に桃のようなお姫様を救出し、お礼のキスをもらった。いやむしろこの長旅の報酬はキスだけだった。
W-8 〜2人の未来〜
2人は無事に王国の城へたどり着き、しばし2人の時間を楽しみ、そして2人はお互いの思いを確認し合い、幸せな時間を過ごしたのだった。
しかし、まだ2人が結ばれたという話は耳にしていない。
それは、赤い帽子を被ったおじさんが、
こんなにしょっちゅう誘拐されるような人では身が持たないし、仕事をする暇がなくなる。
と思ったからかもしれないし、桃のようなお姫様が、
小銭を拾い集める配管工を将来の国王として迎え入れて大丈夫かしら。
と思ったからかもしれない。お互いの本当の気持ちはいくら想像してもわからないが何にせよ無事に姫が帰還したことによりこの物語は幕を閉じた。
あとがき
最後まで思いつきで書いただけのお話をお読みいただき本当にありがとうございます。せっかく最後まで読んで頂いたので、その方々にはこのお話を書くきっかけを少し書きたいと思います。
実は、うちには5歳の娘がいるのですが、数ヶ月に及ぶ自粛期間で外へなかなか遊びに連れて行けなかったので、せめてゲームを買おうと思ったのですが、この自粛期間に、Nintendo Switchは全く手に入らず、仕方なく家にあった3DSを引っ張り出して、中古で『スーパーマリオ3Dランド』を購入し、遊ばせてみました。うちの子は初めてテレビゲームをしたので最初はマリオがただ野原を歩いて回るだけでしたし、ジャンプは真上にしかできませんでした。しかし、子供というのは少しやってみせただけで、新しい操作を覚えどんどん上達し、1ヶ月もしないうちに当たり前にゲームをクリアできるようになっていたのです。
そして最後のクッパ の城へ何度も挑戦した時に、なかなか先へ進めず『代わりにやって』と言われました。そこで耳を疑う一言を言われたのです。
『クッパ のおうちにあるコインはクッパ の物だから絶対に取っちゃだめだからね!』
よくよく話を聴くと、うちの子はただでさえ難易度が高い最後のステージをコインを1枚も取らないというルールで挑戦していたのです。小さな子供にとってはゲームの登場人物だろうが悪役だろうが当たり前に暮らしている人と同じように見えていたんだなと。おうちからお金を取っては泥棒だと。
そしてクッパ 城はクッパ のおうちと、コインもクッパ の所有物だと現実的な観点でこのゲームを捉えた時に、マリオのここまでの行動も見直してみよう、何をやってきたんだという思いを書き出してみたらこんなひねくれたお話が完成しました。なのであくまで3DSの『スーパーマリオ3Dランド』の話です。ニンテンドーSwitchの最新のマリオと話が違う!と思われた方申し訳ありません。また気が向いたら違う話でもやってみようと思いますので興味がありましたらよろしくお願いします。
本当に最後まで貴重なお時間を頂きありがとうございました。