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組織開発の現場から/コンサルタント伴走記①
「組織開発の原点に触れる時」

ToBeingsのコンサルタントが、組織開発の現場でよくある場面において、日々感じたり、 考えたり、キャッチしていることを振り返りながら、「日常の小さな変化・変容に活かす観点や捉え方」 をお伝えします。


組織開発コンサルタントの児玉千織です。
組織開発のプロジェクト初期段階のコミュニケーションや打ち合わせで、クライアント企業の管理職の方々の声として、こんなことを耳にすることがよくあります。

「メンバーの主体性がなかなか上がってこなくて参ってます・・・」
「何をするにも僕らマネージャーが頑張って引っ張らないといけなくて、正直なところ大変です」
「もっと彼らには自立して、主体的に動いてほしいんですよね」

同時に、それを聞きながら、ふとよぎるのは、

「はて、本当にメンバーに主体性は無いのだろうか。
 いやそんなことは無いのではないか。」

という問い。
というよりも、どこからか湧き出てくる確信めいた思い。

sidingしている自覚とともに現在地を確かめる

この率直すぎる問いを、そのまま目の前のマネージャーに投げかけそうになる自分自身を自覚しながら、「これをダイレクトに投げてしまっては身も蓋も無いな」ということも同時に考えます。

自分が、"siding / サイディング"していることを自覚する瞬間です。
(どちらかのスタンスや視点に偏って捉えていること)

この時の私は、既に、メンバー側の立場や気持ちを理解する側の立場(理解あるマネージャー、そういうメンバーの声を色々聞いてきたコーチ)にいて、向こう側にいるマネージャーを、「そうではない人(理解が乏しいマネージャー)」と置いて、問いを投げかけようとしている感覚です。

そこで、その偏りや批判をしたくなる意識が湧いてくることを自覚しながら、投げかけるべき問いを改めて考えます。

なぜならば、マネージャーご自身にとって、”今のところはそう見えている(=メンバーに主体性がない)”ということ自体にも背景や意味があり、共に大事にする必要があることだからです。

実際には、マネージャー達もただ嘆いているわけではなく、大抵の場合は、忙しい合間をぬって状況把握をし、目標に向けたアクションやTo doをメンバーに先んじてフォローしている状況。

そして、そんなマネージャーさん達の多くは、席を立つ時間さえないような多忙な中で奮闘されている場合も少なくありません・・・。

そんな中であがってきた必死な声でもあるのです。

それを無視してストレートに伝えてしまったら、勝手にメンバーを代弁して「あなたは間違っていますよ!」と暗に言われているようなインパクトを相手に与える可能性がありますし、コンサルタント側が、マネージャーの意識を「変えよう」という意図を持っているように伝わるかもしれません。

意図しない動揺は全く望まないことなので、私たちは、こんな風にお聞きすることが多いかもしれません。


伴走者/コンサル:率直なお気持ちを教えていただいてありがとうございます。今、お話しされている中で、特にイメージされているメンバーの方がいらっしゃるのかなと感じましたがいかがでしょうか。

現場マネージャー:はい、そうですね。確かに、今イメージしている方がいます。

伴走者/コンサル:ありがとうございます。よかったら、ぜひご意見を伺いたいのですが、その方が、主体性を持ちにくくなっていった背景やご事情としてはどんなことがありそうだと思われますか?

現場マネージャーえ、・・・!?(驚きつつ、しばらく考えて)
あぁ、そう言われてみると・・・2年前に、彼が立案してくれたプロジェクトの後あたりから、明らかにエネルギーが落ちたような気がします。

伴走者/コンサル:そうなんですね、もう少しその時のことを教えていただけますか?

(次第に、その当時のことが思い出されていく、メンバーの背景が徐々に開かれていく・・・)

実際の会話を基に再現

少し話をシンプルにしましたが、こんな話になることが半分くらいあります。

メンバー側がなんらか主体性を失うに至った背景や経緯があったのだけれど、今や、それが常態化してしまっているので、いつの間にかマネージャー側が相手を「主体性の無い人」という色眼鏡で見るようになっていたという場合です。

微細な気づきによって、意識や行動は変化する

その場合は、このように少し立ち止まって、改めて想像したり、思い出す機会があるだけでも、相手を理解するヒントが見つかるかもしれません。

先ほど、マネージャーさんが「え・・・!?」と少し驚いた瞬間は、ひょっとしたら、メンバーそれぞれのことを「そういう人」という見方しかしなくなっていたことに改めて気づいたり、「そうなるに至る背景がそれぞれにあるのかもしれない」という視点のシフトチェンジが起こった瞬間なのかもしれません。

ほんの少しの、微細だけれど確かな気づきがあるだけでも、その後の意識や行動は変化していくことでしょう。

そして、もちろん、もう半分は「全くわからない、想像もつかない」という場合。

その場合は、「本人と会話しながら少しずつ聴いていく」しかないかもしれませんし、当の本人すらも、よくわかっていない、自覚できていないことが多々あるかもしれません。

少しずつ1on1や対話の時間をもうけて、メンバー本人が自分自身をより理解していく、解像度を高めていくサポートをしていけると良いかもしれません。マネージャー自身の想いや考えも伝えながら。

関わる人たちの大切な想いが「今ここ」に表れる

人と組織の変容を支援する現場では、目の前の人、その先にいる人や関係性、カルチャーがあります。そして、それぞれに背景、痛みや願い、大事にしている価値観があります。

それは、「過去」「今ここ」「未来」の時間軸で、変容しうるものではありますが、重要な点は、「今ここ」の時点で、その人本人を通じて、それらはどう表されているのか、どのように捉えられているのかということです。

そこには、そうなるに至った分のエネルギーと重みがあり、多くは言葉にすらなっていない曖昧な状態で、様々な要素が絡み合っているかもしれません。

だからこそ、私たちはそれらを丁寧に大切にお聴きし、次第に紐解かれるための支援をしながら変容・進化・成長を見守る必要があるのだと思っています。

組織開発の原点には、そこに関わる人たちの、かけがえのない想いや価値観、人生があるのだなと思うと、体温が少し上がってくるのを感じます。


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執筆者:児玉千織
ToBeingsコンサルタント / コーチ / ビジュアルプラクティショナー

早稲田大学 政治経済学部 政治学科卒業後、損保企業にて法人営業、リンクアンドモチベーションにて法人営業/コンサルティング、CSKホールディングス(現SCSK)にてグループ全体の人材開発・組織開発等に従事した後、出産を機に4年間の専業主婦を経て独立、現在にいたる。
自身の多様な経験をもとに、『人生の多くの時間を費やす仕事が苦行ではなく、より楽しく自分らしく活躍できる場』となるよう、企業の組織活性化支援や人材育成支援、女性の家庭や社会での能力発揮・活躍の支援を行なっている。

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