地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について(社会保障審議会 第93回介護保険部会 資料2)を斜め読みした感想とか。
田舎の事業所ですので、少し制度が変わると結構いろいろと変化があるので
今後の事業運営の方向性もあるので第93回介護保険部会の資料に目を通しました。
こういう方面での専門家でもないので、特にいえる事もないのですが、だいたい国が示す方向性くらいは感触としてつかんでおこうと思ってちょいちょいこういう資料には目を通すようにしていますが、正直、関わりのない事業についてはよくわかりませんし、書いている内容も何を言っているのかわからない内容も多々あるので、そんな中で感じた事などを書いて頭を整理したいと思います。
資料2を読んだのですが、237枚のスライドです。
その時点でうんざりですね・・・
5/16(月)の10時~12時の間で開催(WEB)されていたようですが、これだけ多岐に渡る内容を2時間で・・・というのは相当なもんだと思います。
たとえば当法人で同じような資料を用いた会議をするとなると、配られた資料を読むだけ会議ですね、間違いなく。
とりあえず資料の内容を見ましたが、まず気になったのが資料内のデータは基本的に介護予防を除くデータになっていた点です。
僕の理解が間違ってなければ、総合事業の対象者はデータに含まれていないという事ですよね。図表のグラフを見ても、要介護1~5までのデータしかないように見受けられました。
これってどうなんでしょう。
地域包括ケアシステムの深化と推進について・・・という資料なんですけど・・・。
正確に検討できるのかなぁ、と不安になりました。
これって総合事業をフィルターする事で、介護給付費を抑制しているように見せたいからなのでしょうか。
そうであれば、割を食うのは自治体なのでは??
・・・と素人ながら心配になりました。
ヘルパーもデイも横ばい傾向ですが、訪問看護は増加傾向ですね。
サテライト事業所の割合も増えているみたいです。
看護師不足もある中で在宅での医療ニーズは確実に高くなるので訪問看護は絶対に必要な在宅サービスになりますが、サービス提供の内訳をみていると気になったのが、それってヘルパーで出来る援助内容でないか?と思う『家族等の介護指導・支援』『身体の清潔保持の管理・援助』『排泄の援助』『栄養・食事の援助』『口腔ケア』の実施割合が高くなっていると報告されていました。
これはヘルパー不足が招いているのか、ヘルパーがそういう支援を拒否しているのか・・・、実態ははっきりとはしませんが、僕自身がこれまで経験してきた経験から言うと、後者の理由が多いのではないか、と思います。
いくつかヘルパー事業所に関わってきましたが、経営的にもチーム運営的にも困難な事業所は、総じて困難事例や排せつや入浴のケアに入ろうとしませんでした。知らないところで勝手に断っていたり、こちらが頑張って契約を取ってきても、実際に派遣に入ったヘルパーさんが対応できずにダメになったり、そういう事業所が圧倒的に多かったです。
逆に、経営もチームもいい状態の事業所は、困難事例こそ自分たちで受ける!難しいケースほど成功事例の共有を密にチームで頑張って取り組む姿勢がありましたし、そういうチームは若手でもベテランでも同じ目線で意見交換ができていました。心理的安全性の高い職場だったと思います。
しかし、残念ながらそういう事業所は本当に一握りでした。
ですので、本来なら訪問看護でそこまでしなくてもヘルパーがきちんと稼働できていれば役割分担をしっかりできる可能性があったのかもしれませんが、もはやヘルパーの人手不足は限界を超えているように思いますし、平均年齢も高く、老々介護でのヘルパー支援なんてのが笑い話ではなくて本当に実施されている状況もあります。
あとはやっぱりケアマネに対しての質を高める内容が多かったですね。
また、医療機関や地域包括との連携の強化なども。
資料にケアマネジメントの流れ、というスライドが入ってたのですが、これって何かの嫌味のように見えてしまう僕の心は汚れてしまっているのでしょう・・・。
また、いまだに理解しがたい制度もスライドに入ってました。
ケアマネジメントの公正中立の確保を図る観点から、前6か月の間に作成したケアプランにおけるサービスの利用割合とサービス毎の同一事業者の割合を公表せよ、という内容です。
だから公正中立にケアマネジメントをさせたいんだったら、ケアマネ集団は国でちゃんと抱えなさいよ。民間に任せておいて公正中立もないだろう、と思います。
いや、本当にいたんですけど、ある拠点管理をしていた時の話ですが、こういう割合を出さなくてもよい時代の話ですが、同一拠点内のケアマネが、ほとんど同一拠点内の事業所のサービスを使わないプランを作成していた事がありました。
僕自身は、必要があってそういうプランになっているのだろう、と思って放任していましたが、法人本部からの指摘で問題になった事がありました。
本人曰く『公正中立の立場ですから、本人の自立支援にならないサービス事業所は紹介できません。』とはっきり言ってくれるんですよね。
よくぞ言った、という感じですが、これって上層部や同僚や同一拠点内の事業所からしたら迷惑な話なんですよね。そして、そのケアマネの判断基準も本当に本人のためになっているかどうかの判定も難しいので、本当に上と横と下に挟まれて大変な思いをしましたが、結局、働きづらくて辞めてしまいました。
例えば僕が最初に採用された拠点では、そこの施設長は明快に『ケアマネは法人の営業なんだから、自法人の事業所を紹介して当たり前だ。』といつも会議で言ってました。(十数年前の話でもうすでに退職されていますし、現時点の当法人の介護支援専門事業部門では、このような指導はしていません。)
一方で、ケアマネの役割は介護保険法で明記されています。
この間に挟まれるケアマネさんは本当に大変だと思います。
一部の事業所で、本当にひどいケースはあるとも聞いていますし、実際にある高齢者住宅に引っ越した方が、そこの法人の事業にヘルパーもデイもケアマネもすべて変更になったケースは実際にありました。
資料には、サービス量の見込みも記されていました。
2040年までの予測ですが、すべての事業で増加見込みです。
定期巡回や小規模多機能などのサービス量の増加率が他の事業よりも高い見込みになっていましたが、これは本当にそうなるでしょうか。
国は、これらのサービスを進めたいんです。
僕も小規模多機能は開設から運営まで取り組んだ事がありますが、事業としては本当に面白い事業です。ただ、職員の確保と月額利用料の問題と、ケアマネージャーを変更しないといけないというハードルが高くてなかなか難しかったですし、この事業が増えるという事は、限りある人材がこちらに流れますので、ヘルパーやデイサービスの人手不足はより深刻になると思います。
少ない人員で多くの人へのサービスを確保するには、スケールメリットを活かす必要があるので、小規模多機能のように利用者に対しての職員数が手厚い事業が増えれば増えるほど、スケールメリットが活かせなくなります。
本当に大丈夫なんでしょうか・・・。
定期巡回も担い手が足りなくて地域との連携の強化が課題になっていますが、こちらも非常に難しいサービスだと思います。
ヘルパーで本当にターミナルとか困難事例に対してしっかり向き合って、もっと在宅生活の限界レベルを引き上げたい。24時間のサービスで支えたい。と真剣に現場のヘルパーさんが思えてないと維持できないサービスだと思います。
そして経営的な目線でいくと、定期巡回よりヘルパーでしっかり訪問回数をこなした方がよいと思いますし、それができれば定期巡回よりもより多くの地域へのホームヘルプサービスの提供が可能になりますので、地域包括ケアシステムには、どちらかというとヘルパー事業の方が重要なのではないか?と思ったりしています。
あとはリハビリの視点やLIFEの活用など盛り込まれた資料になっていました。
面白いな、と思ったのが、自分の保健医療情報をマイナポータル等で閲覧できるようになる制度設計がされているという点です。
p132の図表によると、薬剤情報については2021年10月から閲覧できるようですね。2022年夏からは処方箋や透析情報など、2024年度からは検査結果やアレルギー情報、告知済傷病名、画像情報が、介護情報もこの時期あたりからマイナポータル等で閲覧できるようになるみたいです。
マイナンバーカードの活用だとは思いますが、介護保険情報とかもマイナンバーとかで閲覧できればいろいろと活用できそうですね。
ただ、マイナンバーカードの取り扱いが難しいので、現状のままでは現実的ではないですよね。その場でスキャンできるような端末がないと難しいかもです。
あとは認知症関連の資料も多くありました。
認知症バイオマーカー(BM)というのは初めて目にする情報だったので勉強になりました。
血液検査で認知症かどうか、早期発見とかも可能なのであれば非常に有効な検査だと思います。
もう一つ気になる内容が、ヤングケアラーの問題ですね。
介護サービスを適切に利用できれば、こういう介護で困っている家族とか出てこないはずなんです。
そして、介護保険制度のそもそもの目的が、このような家族を生まない事だったように記憶していますが、記憶違いだったでしょうか・・・。
これって介護保険制度として失敗しているという事ですよね。
利用したいサービスが利用できない。
どうやって利用していいのかわからない。
利用料を支払えないから利用できない。
理由は様々あるとは思いますが、介護サービスそのものが一般の生活から遠い所にあるから、どこに相談していいのかわからない、という状況になるのではないかと思います。
行政の窓口や地域包括がその役割を担っていると思っていますが、そこも人手不足ですからね・・・。
たまに事業所にどうやったらサービスを利用できるのか質問しにくてくれる地域の人はいますが、10年に1人くらいの確率です。
在宅ケアをしてきて思うのは、もっと地域の中で介護の現場を披露できる機会を増やさないといけないな、という事です。
デイでも外に出かけて機能訓練や、地域でのごみ拾いなど、やってる所はやってますが、旧態依然とした風土の中で、そういう取り組みがなかなか浸透しない問題もあります。
よく言われるのが、デイは事業所施設内でサービス提供するのが基本ですから、という言い訳なんですけど、通所介護計画書に機能訓練の一環として屋外での機能訓練をきちんと位置付けていれば問題ないのですが、それすら教えてもやろうとしない現場が多いです。
もっと介護を見える化しないといけないのですが・・・。
小規模多機能で仕事をしていたころは、毎日近所にみんなで買い物にいったりして地域の住民の方と認知症の利用者さんが交流して、地域全体で認知症や介護への理解が深まりましたし、なんでも相談にきてくれるようになりました。
通所でもそういう役割はきっと求められていると思うし、これは在宅介護の事業所がしっかりと意識をして取り組まなくてはならない課題だと勝手に思っています。
あとは保険外サービスの活用をする際の課題やニーズについての資料もありました。
ゴミ出しなどのニーズは本当に高いので、ワンコインで保険外でゴミ出しをする事業者とかあったと思いますので、そういうかゆい所に手が届くような短時間でなおかつ安価で設定できるような保険外サービスは増えると思います。
あと最後に気になったのが、保険者の機能強化です。
デジタル化とかいろいろありましたが、介護給付費適正化要5事業、というワードが気になりました。
介護保険でいう適正化とは、”減らす事”と聞いたことがあります。
そして『介護給付費適正化要5事業の実施状況について』という資料がp235にあります。
この表には、実施率と()内に金額が示されています。
R1年では、ケアプラン点検は84.7%の実施率で1.2億円の金額的効果があったと示されています。
R1年の医療情報との突合・縦覧点検では、98%の実施率で13.1億円ですよ。何をしたらそうなるんですか?・・・どういう事??
と、なんだか怖いです。
不正請求とかの返還の額とかならいいのですが。
そして僕にはよく理解しきれない資料がp236です。
調整給付金の『一定の取組』の状況勘案について、というタイトルですが、どうも上記の適正化事業の5つのうち3つ以上実施しないとペナルティを設けるよ、みたいな内容に読み取れます。
第八期中に「一定の取組」を求め、達成されなかった場合は第八期末年度に減額、とも書かれています。
そして一番下のスケジュール表ですが、2023年度に『対象保険者がいた場合は減額』とあります。
これって地方に配分する交付税や補助金みたいなのを減額するよ、という内容なのでしょうか?
そうなると軽度認定や給付抑制や、そもそも介護認定をしない事が進むような気がしますし、そうであればヤングケアラー問題なんて解決できそうにない気がします。
それに、これが例えば不正請求をただすための制度だとして、こういうハードルを設ける意味って何かあるんでしょうか。
まぁ、ちょっとよくわからない理解してないまま書いたので勘違いしている部分があるかもしれませんが、個人的に気になった内容の紹介でした。