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送迎車の中で。

今日はデイサービスでの送迎の時のお話です。
僕は管理者や拠点の統括責任者をしていても、だいたいどの事業所でもデイやショートステイの送迎には必ず入るようにしてきました。
ずっと書類仕事ばかりでは息が詰まるのと、やはり介護福祉士として常に現場で利用者さんとの接点は作っておきたいからなんですが、同じ管理者レベルの立場の同僚にはあまり快く思われてない節もあって、よくないよとかよく言われていました。そういう意見も理解はできますが、それで自分の仕事や役割が疎かになっているわけでもないので、助言に感謝はしつつ聞き流してきましたが、今の役割は実際にデイサービスの管理者も生活相談員も介護職員も兼務していますので、とやかく言われずに大手を振って現場に関われるので、プレイングマネージャーが今の自分には1番しっくりくるな、なんて思っています。

そうやって半ばストレス解消のような送迎の役割なんですが、利用者さまのご自宅の環境や昇降時の動作で身体機能もある程度把握できますし、運転しながらでもある程度お話もできたりするので本当に楽しいです。

そんなある日の送迎の場面での出来事だったんですが、朝から雨が降っていたのですが、利用者さん全員を乗せたあとの事業所に向かうだけの道のりの時に急に晴れてきたんです。
すると、ちょうど目の前に綺麗にくっきりと虹が見えて来て、まるで目の前に大きな虹のアーチができたみたいな綺麗な景色でした。

利用者さんに『虹がでましたよ!』と伝えると、男性も女性も身を乗り出して虹の方を見上げて『虹なんて何年ぶりだろうね。』『しばらくみてないなぁ』『こんなにはっきり見えたことないねぇ』『今日はいい事ありそう。』などなど凄く楽しい雰囲気になりました。
虹の色って何色あるんだろう。たしか七色だったと思いますよ。この虹は紫色まではっきり見えますね。虹って川から川にかかるんだっけ?いやそんなことないべ(笑)等々・・・

そうして話が盛り上がる中で、利用者さん達の会話の話題がデイサービスでの過ごし方の内容になっていきました。
同乗していた方々はだいたい同じ地域に住んでいる方々ぢったので幼馴染だったりで、最近車椅子から歩行器での歩行まで回復してきた方もいて、デイで歩かせて貰ってるから膝も悪いけど歩けるようになってきたよ、ならもっと頑張って杖で歩けるようになろうね、とかの会話で盛り上がっていました。

そんな流れの中で、同乗されていないある認知症の方の話題になりました。
その方は身体機能はしっかりしていて歩行状態も独歩でふらつかなくて歩ける方なんですが、自分の座席がわからなくなってしまい、トイレやお風呂から戻ってきてもどこに座っていいかわからなくなる方でした。

片麻痺で杖歩行でいつもゆっくりトイレなどに歩いて向かっている方が『あの人、私がトイレに歩いていると最近いつも手を引いてくれるのよ』『優しくてとっても嬉しいの』『助けてくれてありがとうと言うとね、私なんかいつも席がわからなくなるけどいつも教えてくれるからいいのよ、って言うのよ』『そんな事お互い様だからいいのよ、これからも助け合いましょうね、って言ったの、わたし本当に嬉しかったわ』と話されていました。

僕も認知症のその方が座席がわからなくなっている時に必ず声をかけてあげている様子は見ていましたし、杖の方の手と肘を支えてトイレに案内してくれている様子も見ていたので知っていましたが、そういうやり取りの記憶がちゃんと残っていて、いつも助けてもらってありがとうという気持ちで手伝ってあげている事までは聞き取れていなかったので新しい気づきを得る事が出来ました。

新しい場所は覚えられないけれど、人から受けた援助や感謝の気持ちは忘れずに定着している事は、やはり認知症だからといって何もかも分からなかったり忘れていたりするわけではなくて、そういう型にはまらないものなんだと改めて知ることができました。

うっかりすればそういう利用者さん同士の助け合いも危ないからといって制止してしまいがちな介護現場ですが、僕らの倍以上の人生経験のあるお年寄りの観察眼やアセスメント能力はかなり高度だと思っていて、そこから学べる事はたくさんあると思っています。
それに、人間同士が助け合うのはとても自然な事だと思いますから、利用者さん同士の助け合いの機会はとても大切だと思います。
介護のプロとして、そういう助け合いの場面をしっかり見守りながら、事故が起こらないようにさりげなく環境を整えたりフォローしたりする事が、より専門性の高い仕事ではないかと仕事から帰ってランニングしながら考えていたので記事にしてみました。

主役は利用者さん。
で、あれば利用者さん同士の助け合いもあって然るべきではないかと思います。

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