健康診断書の写真撮影
42歳の鹿山信夫さんの養老生命共済の満期が来た。
幸いなことに、今まで入院共済金や手術共済金を請求したのは虫垂炎と骨折だけで、現在はいたって健康な方だ。
元農協理事のお父さん、定信さんが掛けた共済だった。
ほとんど営業も掛けない内に、すんなり、次の共済に加入していただけることになった。
健康状態に問題が無いお客さんには、終身共済の1型や1.5型くらいのタイプで、それに医療共済の日額5,000円60日保障プランをセットで作成。
鹿山家のご一家として考えれば、最終的に伸夫さんが亡くなられて受け取る死亡保障の共済金額は、掛け金として払った部分は賄える計算にできる。
昔は満期金を一括で組み込んで、一部一時払いとかできたらしい。
今は、全期前納という方法でやるほかない。
一部一時払いと全期前納は、説明するとややこしいからここでは割愛。
今の時代は、掛け金が掛け捨てにならないようなプランの生命保険なんて存在が皆無。
医療保障を外したり、為替リスクのある外貨建てにしたりしないと、掛けた分が返ってくるような商品にできない。
JA共済の一時払い終身共済っていうのは、入院手術の真っ最中じゃなければ90歳まで加入できるし、掛け損は無いけれど、掛けた分に微々たるプラスαが付いて返ってくる。
商品名に「一時払い」と付かない、普通の終身共済なら、加入者の年齢が若ければ若いほど、返ってくる部分が1割、2割と多くなる。
だけど、健康状態については、保障金額が大きくなるため、健康診断が必要なケースになってしまうことが多い。
そうすると、平日勤務のお客さんに、地元の指定診査医に健康診断に行ってくださいとお願いするにはハードルが高い。
そんな場合、健康診断結果表扱い という代替手段がある。
勤めをしているなら、必ず健康診断や人間ドッグを受けている。
その結果表の写しをもらうことで、わざわざ健康診断に行っていただく必要が無くなる。
問題は、その書面の写しについては、タブレットのカメラで撮影をしなければならないことだ。
全部で3ページあり、紙の折り目がまっすぐ伸びず、文字も小さいうえに紫色の印字で見えにくい。
光の当たる角度を変えてみる。
タブレット自体の角度を変えてみる。
だめだ・・・所々鮮明に写らない。
「鹿山さん!すみません。先に謝っておきます」
「え?」
「健康診断の結果表の写真は重要なんですが、全部見えるように撮影が難しいので、また、お伺いしなおすことになるかもしれません」
「ああ、なんだ、そういうこと。農協さんも大変だね」
先々で、問題になりそうな可能性が明らかな場合、その時に謝るよりも、予測できているうちに謝ってしまう方が、あとの仕事の速度も数倍違ってくる。
はたして、この写真の判定は、共済担当はOKしてくれるだろうか・・・。