同級生とお話したら、私だけ年金無いの
担当地区にあるお寺、佳堅寺(かけんじ)の敷地の隣にある幼稚園、かけん幼稚園には、毎月25日過ぎ、夕方4時ごろに集金がある。
園長先生は、隣のお寺の住職さん。
貯金を積んでくれているのは、職員さん2名。
一人はバスの運転手をしている原田正雄さん。
原田さんはちょうど、バスの洗車を始めたところみたいで、長靴にゴム手袋、ゴムエプロンの姿が見えた、
遠くでも僕に気付いて、
あ・・・
というリアクションだったから、
すぐさま
「また、明日、お伺いしますので!」
と、話した。
「おう!わぁーりぃね!」
原田さんは片手をあげ、そのままホースを引っ張って洗車を始めた。
裏口に回り、職員通用口からインターホンを押し、ドアの前で待つ。
もう一人の集金は、大ベテランの女性の先生で、自宅ではご主人が専業農家をされている大石文恵さん。
証書とお金を持って出てきてくれた。
預かる作業をしていると、大石さんが何やら話をしたそうな雰囲気でこちらをみている感じがした。
現金をしまい、証書に判を押してお返ししながら、
「何かありますか?」
と聞いてみた。
「年金の事ってわかる?」
年金の質問だった。凄く大雑把な内容ならわかるけど・・・
「内容によってですが、どのようなことですか?」
「実はこのあいだね、同級生とお茶したのよ」
「おおー、いいですね♪」
「うん、それでね、みんな年金をもらってるっていうのよ」
「失礼ですが、生年月日ってお聞きしていいですか?」
「昭和33年6月11日よ。みんな、去年誕生日が来て、年金を手続きしたって言うの」
バッグの中に入れてある
「厚生年金の受給開始年齢の早見表」
を見る。
確かに、 女性、 S33年4月2日~S34年4月1日生まれ だったら去年度から誕生日を迎えた人は厚生年金が開始になっている。
最初に話を聞いていた時は、内心で、その同級生は国民年金を「繰上げ請求」しているのかと考えた。
でも、年齢を確認してみたら、現在のご年齢で既に受給ができる。
「うーん、確かにそうですね、もう受給開始のご年齢ですね」
「そうなの。でも、私の所には年金の大きな封筒って届いてないのよ」
カバンから年金のチラシを出し、チラシに印刷されている緑色の封筒の写真を指差して
「この、緑色の封筒が、61歳の誕生日の2か月くらい前に、届いていないってことですよね」
念のため確認する。
「そう、そうなの。同級生はみんな届いたって言ってて、『届いたのに見落としちゃったんじゃないの?』って言われたのよ」
でも、大石さんはかなりのしっかり者だ。他の職員の方からも、保護者からも信頼が厚い。そんな大石さんが、自分の年金の封筒を、(しかも緑色でデカくて目立つあの封筒を)見落とすとは到底思えなかった。
「勉強不足で申し訳ありません。ちょっと持ち帰って調べさせていただいてもよろしいですか」
「いいわよ」
「農協職員で年金の専門の相談員がいますので、その職員にも聞いてみます」
定年退職後に再雇用で年金相談員をしている職員がいる。
翌日、その年金相談員の岩田さんに電話で聞いてみた。
・・・・・・・・即答だった。
気付かなかった。
昨日、話をしている時点で、回答ができたはずだったのに、頭が全くそこまでの考えに至らなかった。
そうだよ、幼稚園の先生だよ。
厚生年金じゃなくて、共済組合だよ。
共済組合は男性と女性の開始年齢は一緒だよ。
女性、 S33年4月2日~S34年4月1日生まれ の、
共済組合加入者は 61歳じゃない、63歳からの支給だ。
研修で習ったじゃないか!
日本年金機構からのパンフレットをネットからダウンロードして印刷。
夕方にかこう幼稚園にお伺いして、先に原田先生の集金を終えた後、大石先生を呼んでもらった。
印刷したパンフレットをお渡しして、該当の個所にマーカーをしてご説明した。
「わざわざありがとう。じゃああと1年待てばいいのね」
「こちらこそありがとうございます。大変、勉強になりました」