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第2話 顔合わせ! Part B
斎とウダウダと言い争っているうちに、重たい部屋の鉄扉をノックする音が聞こえた。斎が手を振って迎える。
「どうぞ〜!」
「失礼します」
「おつかれ」
「げげっ!」
どれが俺の「 」かはお分かりいただけるだろう。入室した二名分の人相を見て、俺はぴったり二名分の衝撃を受けちまった。
まず、最初に足を踏み入れた生徒が超弩級の美女だったことだ。しかもただの美女ではない。俺のストライクゾーンめがけて宇宙の果てから地上に向けて投球しても足りないような美女だ。背中まで伸びるなめらかな黒髪、細い腰と長い脚、そして高身長ゆえに肩に提げたスクールバッグが小洒落た具合にキマッている。
「二条 楓です。副会長。よろ」
楓さんは――いきなり名前呼びだが別に心の中なら許されるだろう――は素っ気ない挨拶を済ませて、それで本日の業務は終了とでも言いたげに着席するなりスマホ画面をいじりはじめた。
なるほど、全身クールビューティってやつか。これは攻略のしがいがあるぞ……。むっふっふ。
「聖、あんたヘンなこと考えてない?」
むすっとした表情で詰ってくる斎。
だが、美女は世界の正義である。美女の前では小うるさい幼馴染など些細な存在にすぎないのだ!……と、つよつよメンタルで夢想しているところへ、後からもう一人の男子生徒が入ってきた。その姿を見るなり、さらに俺は別の意味で驚愕した。
「ちっす! 書記担当、陣内 徹参上で~す! さてさて、転入生はどこだい?……って、マジかよ!」
マジかよはマジでこっちの台詞だった。
陣内 徹。ひとつ上の学年の、俺の従兄弟だ。
およそ五年前、俺が親の都合で上京したことは前述したとおりだ。もともと徹の家族は東京での生活がわりと長く、俺たち家族の社宅から目と鼻の先にあるマンションで暮らしていた。親戚ということもあり、東京時代にはよくツルんで遊んでいたものだ。
しかし、お互いに転勤族だったことから、徹が中学三年(俺が中学二年)のとき、彼は家族と一緒に地元へ引っ越していった。それ以来、年賀状を家族レベルでやりとりする他は、主だった交流が途絶えていた。
「おおっ、感動の再会といったところかね。世間は狭いね~」
俺たちの反応に察して、平賀先生は愉快そうに言った。
徹は「元気だったか」「変わってねえな、聖は」「寂しかったぞ~!」とどこから本気でどこまでがお世辞か分からない文句をひと通り並べながら、
「とにかく元気そうでよかった!」
と、やけに安心した風に大きく頷いた。
平賀先生が、大きな手をパンパンと打つ。
「ささ、これで役者は揃ったね。それでは皆の衆、9月の『聖徒会』定例会議を開きましょう」
ちょっと待て。俺はまだ、ここに入会、でなくて「入部」すると決めたわけじゃない……と言おうとした。あんな斎の勧誘に納得できるわけはないからだ。
しかし、運命とは皮肉なものである。
実は、このときの俺の心には、自分の「聖徒会」入部云々よりも看過できない疑念が湧きおこっていた。それは、陳腐な言い方になるけれども、「違和感」と呼ぶべきものだろう。
だから、ほんとうに何気なく、率直な疑問をみんなに向かって投げかけた。この発言がきっかけで、否応なく「聖徒会」の大それた歴史に巻き込まるなんて未来を知る由もなく。
「あの~。『生徒会長』って人は来ないんですか?」
……。
…………。
………………。
………………え?
突然ぶっこわれた中古パソコンのほうがマシだろうと思えるほど顔面をフリーズさせた三人の「聖徒会」メンバーたち。唯一、無精ひげを撫でながら不敵な笑みを浮かべるのは平賀先生だけだった。
「よく気がついたね、一上さん。えらいよ」
えらいと褒められましても……。
転入早々、なんだかヘンテコな場所に来ちまったようだ。
どうなってんだ、この高校……。
(たぶんつづく!)