帰り路の足どりが軽いのは
ちょっと前に辛いことがあったから
吸いこむ風が心地よいのは
ちょっと前に風邪を引いたから
いやなことは
ながれて
たのしいことは
固まって
生きのこることは
切なくて
ただしくないことは
つよくて
ジグザグに折り返す道を
飽きもせずに歩きつづけて
後ろを振り向いたときにふと
たどってきた道のりの長さに
戦慄する
泡を吹いて消えたら
風を飲んで飛べたら
光を模して死ねたら
月に怯えて吠えたら
どんなにか
人間は楽になれるだろう
そんなことを夢にみて
また僕たちは
ジグザグの道を歩く