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あしながおじさん

ジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』を読了。

私の中ではタイトルだけが一人歩きしていた感じがしている。

ので、ちゃんと読もうと思って読んだ。

読み終わって、私は考え込んでしまった。

これはどういう小説なのだろう。

ジュディのシンデレラストーリーのようでもあり、
少女から自立した女性へ成長するサクセスストーリーでもあり。

面白いのは、ジュディが赤毛のアンのように何事にも価値を見出すような強い女の子ではないこと。

作家になれるかもと希望を抱きながらも、だめかもしれないと自信をなくし、友達の好き嫌いもはっきり言う、
おてんばで明るくて、でも孤児院出身という負い目を隠しきれない少女。

ジャーヴィスは、いつからジュディのことを好きになったのだろうか。

孤児院で見出した時か。
ジュディからの手紙を読んでいるうちに徐々にか。

それにしても返事が来ないとわかっていても手紙を書き続けるジュディは偉い。

私ならだんだん適当になってただの業務連絡になるだろう。
また、あしながおじさんからお金をもらってそれに慣れてしまわないジュディも偉い。
しっかり返そうとして、小切手を断る場面も出てくる。

孤児院育ちだったジュディが、神様がサイコロ振ったように突然見出され、
大学に通い、その知性を磨き、才能を伸ばし、ついには想い人と結婚をする。

現実であればそんなうまい話が、、と思うような物語であるが、
孤児院育ちという点がこの小説の最も大事な所であるような気がする。

子どもは、環境が整っていればどこまでも伸びゆく、
そして、孤児院のように他人に知られたくないような辛い過去があったとしても、その経験が必ず糧になるということ。

孤児院育ちのジュディが、大学という整った環境で文才を伸ばし、
孤児院育ちがゆえに、まわりにある綺羅びやかな世界、地位や名誉に溺れることなく、
人にとって大事なことを選びとることができるようになっていた。

幼くして父を失ったジーン・ウェブスターは、どんな環境でも負けるなと読者にも自分にも語りかけるように執筆したように思えた。

「わたし、だいじなのは、とびっきり大きな歓びを得ようとすることではないと思います。だいじなのは、小さな歓びを最大限に楽しむことだと思います。おじさま、わたし、幸福の真の秘訣を発見しました。それは、いまこのときを生きることです。過去をいつまでも悔やむのではなく、未来を待ちこがれるのでもなく、いまこの瞬間を最大限に楽しむことです。」

「ほとんどの人は、生きるのではなく競争しています。遠い地平の目標に到達しようとがんばっているうちに息が切れて、いま通過している周囲の美しくて穏やかな景色が見えなくなってしまうのです。そして、気づいたときには、もう年を取って疲れてしまって、目標に到達できるかどうかなんてどうでもよくなっているのです。」

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