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はじめてのおすきな席

“お好きな席どうぞ”

飲食店に入るとよくかけられることば。
ファミレスとかラーメン屋とかだと、きっちり店員さんの思い通りに案内されることが多いかもしれないけど、私はよく小さな喫茶店に入るのでお好きな席を選ばされることが多い。

“お好きな席どうぞ”
私はこのことばに、よくドキッとピリッと緊張する。
何度も通った席なら、そりゃ“お好きな席”もあるだろうけど、初めての店なんかどうよ。そんなのあるわけない。
ただでさえ初めてで緊張してるのに、(店に入った瞬間の雰囲気、目があった瞬間の店主の表情・ことば、店内の席のレイアウト——どこに何人席がどう配置されているか、席それぞれの特徴、他客は何人でどこに座っているか——などなど、一瞬で把握しないといけないから)
“お好きな席どうぞ”
このことばをかけられた途端、一気に脳内パニックになる。※だけど私はこれが全然表情に出ない。
はー、言われた通り好きに選べばいいのに、
「1人なのに4人席(もしくは広めの2人席)座ってもいいのかな…。いや、空いてそうだしいっか??うん、いきなり店主ととカウンターで向かい合わせもなー。ん、やっぱ先客があそこに座ってるしこっち??うわ、あのテーブルの色好きだな!」…とか。
いらない気遣い、いらない心配、だけどどこでもいいわけでもなく…。
そして、この脳内パニックは長くても3秒しかかけちゃだめ。だって初対面の店主さんとの間に、変な「間」がうまれるから。どうしても決めきれない時は、足を一歩、二歩、と動かしはじめる時間でかせぐ。

こんなに大変な気持ちになってるのに、結局は直感で選んだ席に流れで何となく座ってしまうのが大半。それが私。ああ、今のパニックは何の意味があったのか…。

座ってホッと一息つく。
…のもつかのまで、今度は店主にメニューを渡される。
そして次のことば、


“お好きなものどうぞ”


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