思考力の鍛え方
ビジネスパーソンのみならず、生きていく上では思考力があるに越したことはない。受験勉強に偏った日本の教育で足りないのが思考力を鍛える事だと思っている。思考力訓練の不足は英語力にも通じるばかりか、国語力や数的能力にも影響する。これらに共通するのは、言語による抽象概念を扱う点だ。
言語ならいつも使っていて用は足りている。それ以上に何をやれと言うのだと思われるかも知れない。日常会話で使う言葉と、思考力で必要になる言葉は似て非なるものなのだ。
日常語では言葉が具体的なモノやコトと結びついている。それに対して思考力を司る言葉は言葉そのものと結びついている。抽象度の違いと言っても良い。
例えば、リンゴという言葉が指すものは誰もが想像するあのリンゴだ。指を指してこのリンゴと言わない限り、いろんな種類のリンゴを引っくるめた総称であるという点で抽象化されているが、リンゴ以外のものを指したり、リンゴという言葉が思考に使われることはない(リンゴは何故落ちるのか、と言った人がいたと言われているが、そこに登場するリンゴはナシにでもイチゴにでも変えて良い)。
それに対して、思考で重視されるのは言葉そのものと言うよりも、言葉から連想される何かと、その繋がり方だ。例えば、リンゴとナシとイチゴとミカンに共通することは? という問いによって現れる何かだ。これらを抽象化したものとして我々は果物という概念を使う。じゃあ、アボカドは果物? それとも野菜? それは果物という言葉をどう定義するかによる。という具合に思考は進む。
前置きが長くなったが、思考力を鍛えるために何が必要か。それは読書だと私は思っている。読書以外には思考力を鍛えることは出来ないとすら思っている。しかも、なるべく難解な本が良い。1ページを読み進めるのに何分も何時間も掛かるような本なら最適だ。何度も読むうちにその手の本を読むスピード(つまり理解力)が上がってきたらしめたもの。その頃には着実に思考力が向上しているはずだ。
もっとも、最初からそんなのは無理なので、小説でも何でも良い。活字を読むことに慣れよう。慣れてきたら速く読むことを目指そう。その次に、自分の興味がある話題をテーマにした本で、理解が難しそうな本を手に取ろう。それを読み飛ばさず、ページごとにしっかり理解しながら読み進めてみよう。分からなければ同じページを何度読み直しても良い。何なら前のページに戻っても良い。とにかく最後まで読み切ろう。その手の本を10冊も読めばかなり力がついているだろう。
ただし、一つだけ気をつけなければならない事がある。それは内容的に難しい本と文章が難解なだけの本は違うということだ。読むべきは、内容が自分にとって難しい本であって、文章が小難しい本では無い。要するに、文章が下手で読みづらいだけの本は違うということだ。
もし余裕がある人なら、次に私は、外国語の本を読むことを勧めたい。思考力は言語に宿るため、言葉が違えば思考方法が違う。外国に長くいた人の考え方が日本人と少し違って思えたこたがないだろうか。それは、思考の仕方が違うからなのだ。日本語以外の本を読むことで思考力の範囲を広げるのだ。
最初は辞書を使っても良いから原書を読み切ろう。最初は難解ではないものを選ぼう。もちろん小説でも良い。それが出来たら、辞書を使わずに読んでみよう。完全に理解できなくても良いので、語感とスピードを意識してみよう。
辞書無しで何冊か読んでみれば、日本語だけからでは学べない何かが得られるはずだ。
さて、ここまで読むだけで音を上げた人もいるだろう。短期間で修得できるものではないので、焦る必要は無いので、じっくり取り組めば良い。もしあなたが学生で、読書の習慣が無いのなら、是非学生のうちに身につけておくと良いだろう。
あと、小さなお子さんがいる方なら、毎日読み聞かせをしてあげることをお勧めする。出来れば喋り始める前の赤ちゃんの頃からやると良いだろう(物心ついた後だと聞くのを嫌がる事があるからだ)。相手に分かり易い様に読み聞かせるのは自分の為になる。大切なのは、子供が様々な質問を投げて来たとき、子供だからといって適当に答えずに、きちんと言葉で正しい回答をするのを心掛けることだ。これもまた、自分の為にもなる。
おわり