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Netflix映画『アドヴィタム』
フランスの国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN、ジェイジェン)の隊員を中心とした物語。元GIGN隊員の主人公フランクは、ある事件を発端に除隊することになった。物語はフランクが除隊後に別の仕事をしているシーンから始まる。
フランスの警察組織について全くの予備知識が無くとも楽しめる映画になっているが、見ている最中にちょいちょい警察や軍との違いが気になったので、調べてみた。
まず、フランスの国家憲兵隊とは警察組織の一つで、主に地方圏での警察活動を担当するとともに、フランス軍の一部を構成するという。警察と軍の中間的な位置づけだろうか。警察業務に関しては地方が憲兵隊、都市では国家警察という分担があるものの、その区分は明確ではないというから分かりにくい。
憲兵隊の中で、人質救出作戦や対テロ作戦を重視した特殊部隊がGIGNで、通常の憲兵隊では対応が難しい事案や、都市圏以外、あるいは国外での活動はGIGNが担当するという。隊員は志願制で、憲兵隊での5年以上の勤務と優秀と認められた者が厳しい選抜課程を経た後に10ヶ月に及ぶ訓練を受けてようやく部隊に配属されるという精鋭部隊だ。
という、予備知識があるとこの映画はより楽しめるかも知れない。特に、都市圏ではGIGNよりも警察が主体として事件に対応しているという点が分かるとシーンの解釈が深まるだろう。
GIGNを除隊し妊娠中のレオと生活するフランク。臨月が近づく妻の定期検査で病院を訪れ二人で帰宅すると、室内が荒らされている。これが2回目だという。何で我が家が襲われるのか、妻のレオはフランクに問いただすが、覚えが無いという。しかし、そんなはずもない。理由はフランクが除隊することになったあの事件に隠されていた・・・。
フランス映画というと暗くて終わり方がハッキリしなくて、芸術ぶって楽しくないという印象を持っている人がいるかもしれないが、映画『TAXi』シリーズでも分かるように、アクション系の娯楽映画もある。
本作アドヴィタムも、迫力ある格闘シーンや、緊迫したカーチェイスのシーンがふんだんにあって、ハラハラ・ドキドキを楽しめる(007のような感じでもある)。
途中、主人公がGIGNになった頃の青春ドラマ的なシーンが入り、ストーリーからの脱線を思わせたが、緊迫した任務にあたるGIGNにおける仲間との結束感がこの映画のキーにもなるので脱線とまでは言えないだろう。
舞台がフランス・パリで、全編フランス語。警察車両のサイレンがあの気の抜けた音というのには慣れが必要かも知れないが、ハリウッド映画に引けを取らない十分に楽しめるアクション映画になっている。
ちなみに、題名のアドヴィタムはラテン語で、命ある限りという意味らしい。題名だけはアクション映画的というよりも芸術系のフランス映画っぽいと思った。
おわり