セブンチェアを修理する
セブンチェアとは
「アルネ・ヤコブセンによりデザインされたセブンチェアは・・・家具の歴史においてアイコン的存在の椅子でもあります」
これは、フリッツ・ハンセンの広告コピーであるから控えめに受け止めた方が良いが、この椅子何故かうちにもある。私が以前買ったからなのだが。
しばしば座面が外れる
どんなものでも利点と欠点があるように、この椅子にもそれはある。
利点といえば座りやすさということになるかと思うが、欠点というとまずはこれだ。
この椅子、座面が外れやすい。こちらをご覧あれ。
曲面をなした合版で出来た座面の下にはスチールパイプの脚部があるが、これらを繋いでいるプラスチック製のパーツが座面から外れてしまうのだ。このパーツ、座面とはボンドと一つの木ネジで固定されている。そのパーツごと剥がれるようにして取れてしまうので、脚と座面が分離してしまう。そのたびごとに木工用ボンドで貼り付けていたが、どうやらこれでは根本解決とはならないらしい。
この固定パーツ、昔は木製だったらしいが、いつからかプラスチック製(ABS樹脂)になっているそうだ。使われている木ねじは1本のみだし、座面の板厚が約10ミリだから、木ネジでの保持力は知れていて、実質的にはボンドで固定されていたのだろう。しかし木工用ボンドでは木とプラスチックを強固に接着することは出来ない。だからこそ、直ぐに外れてしまったという訳なのか。
これまでは、剥がれる度に木工用ボンドで貼り直していた。使用していた木工用ボンドは木材をくっつける接着剤だ。今思えば、これではプラスチックを固定することは出来ない。
違う材質を固定できるボンドを使えば良いのだということに私が気付くまでこれ程の年月が掛かるとは予想だにしていなかったのだが、気付かなかったのだから仕方が無い。
もちろんボンドだけでは心もとないのであって、何とか他の手段を織り交ぜて固定しなければならない。
どうやって修理するか
「セブンチェア 修理」でネット検索すると、家具修理を行う店への修理依頼がそれなりにありそうなことが分かる。つまり私の使い方の問題では無く、チェア自体の設計の暇疵だったということだ。
修理に出せばやってくれる店が多数あることが分かったが、とは言え自分で修理してみないと気がすまない残念な性格の私。修理方法の詳細を考えなければならない。
接着剤を変えるだけでもそれなりに耐えられそうだが、どうせなら簡単には取れないようにしたい。
修理屋さんではプラスチックパーツを木製のものに変えてくれるところもあるようだが、さすがにそれを自力でやるのは大変。
そこで固定用の補助パーツを3Dプリンタで作ることにした。
固定用補助パーツ自作
接着剤での固定を補強するとなれば、木ねじの数を増やせば良い。
しかし、座面の板厚が約10ミリしかないので、少し工夫が必要で、もともとのプラスチックパーツを活用しつつ、これと組み合わせて使えるようなパーツを考えてみた。
補助パーツを作ってはめ込んでみたりしたのだが、結論を言えば、これらの自作パーツは使わなかった。
なぜなら、プラスチックパーツに穴を開けてネジ止めしている補修例を見つけたからだ。
もともとあるプラスチックパーツを加工
ネジの数を増やせば強度的には良いのだから、もともとあるプラスチックパーツに穴を開けてネジ止めすれば良いというのはごもっとも。
このプラスチックパーツはABS樹脂で、ドリルで穴を開けると割れる恐れがあると思ったが、ちょうどうちにはアクリル板用のドリル刃があるのでOK。
さっそく穴あけ。
裏に板を当ててアクリル板用ドリルで穴あけすると綺麗に仕上がる。どうせ見えなくなるので関係ないが。
使ったのは5mmのドリル。
座面への貼付け
穴あけ加工したプラスチックパーツを接着剤で座面裏に貼り付けた。テープで固定して丸1日放置。
使用した接着剤はこれにした。
ちなみにネジ止め用のネジはこれにした。M4×12mmのタッピングねじ。
ネジ止め用のプラスチックワッシャ作成
接着剤で固定が終わったらネジ止めするのだが、プラスチックパーツが薄いので座面にネジが貫通する恐れがある。
そこで急遽プラスチックワッシャを使おうと思い立ったのだが、あいにく家には無かった。そこでプラワッシャを3Dプリンタで作成した。これくらいならあっという間に出来る。
このプラワッシャを使ってプラスチックパーツを取り付ける。
取り付け完了後がこちら。
ちなみに、このプラスチックパーツの取り付ける向きは、上の写真で言うと、写真上が背もたれ側となる。
脚の取り付け
ここまでくればあとは脚部をネジ止めするだけ。
この取付ネジを外す時は六角レンチを使用したが、よく見るとこのネジ、六角ではなく六角星型のトルクス。そこで今更だが取り付けの時はトルクスレンチを購入した。
最後にカバーを取り付けて完成。
完成
こんなに簡単に出来るならもっと早くやっておけば良かった。
修理方法を調べたり、考えたり、パーツを作ってみたりしていたので延べ2週間は掛かったが、次からはもっと早く出来るはず。
いやいや、次があっては困るのだ。
おわり
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