映画『グリーンブック』
ニューヨークの貧しい地域で育ったイタリア系移民の主人公。ナイトクラブで用心棒の様な仕事に就いていたが、店の改装に伴う長期休業で職を失って、運転手の仕事を紹介される。面接に行ってみると、雇い主は彼が毛嫌いしていた黒人だった。その黒人は北部地域では有名なトリオバンドのリーダー兼ピアニストだった。
アメリカ南部を巡る2ヶ月のコンサートツアーのドライバーとなった主人公は、ボスとなった黒人ピアニストから気品ある振る舞いを叩き込まれる。それと同時に、南部地域での人種差別の現実を目の当たりにするのだが……。
喧嘩っ早くて柄は悪いが人間味が溢れる雇われドライバーの主人公と、上品だが暗い陰をを持つ黒人のボスのミュージシャン。人間社会の複雑さを体現しているかのような二人の、人情と友情とそして愛情にと溢れた、実話に基づくロードムービーだ。
多様性を認め合う潮流のもとで差別意識はかなり薄れたが、完全には消えずに根強く残っている。差別している側はそれほど感じていなくても、差別される側は辛い思いをしている。そのギャップが大きいのも差別か消えない理由の一つだろう。
見た目にとらわれずに一人の人間として向き合うのは、集団の中にいると難しいものだが、マンツーマンで深い関わりを持てば簡単なことだ。こちら側からあちら側を眺めているうちは見えてこない人間性が、同じ空気を吸うことで見えてくる。
受け入れることを拒む気持ちは、他の誰でもないあなた自身の中に宿る。受け入れることで身も心も軽くなれるのだとしたら、そうしてみる価値があるのではないだろうか。
おわり
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