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【読書感想】大人になった本と大人になった私
ズッコケ中年三人組
著者:那須正幹
出版社:ポプラ社
ジャンル:小説
あらすじ
あの日から28年たち40歳を迎えたズッコケ三人組。すっかり中年になり、それぞれの人生をあゆむ3人のもとに、かつて激戦をくり広げた怪盗Xが現れる。
再集結した三人組と怪盗X。時を超えた勝負のゆくえはいかに?!
感想
ズッコケ三人組に続編があり、それが中年三人組と聞き、読んでみたいと思った。ズッコケ三人組というと、児童書という頭があったが、図書館内のパソコンで検索をかけてみると、一般の小説を扱う本棚が表示された。
いざ手に取ったその本は、紙の厚さも文字の小ささも大人向けのそれ。おなじみの挿絵もなければ、もちろん漢字にふりがななどふられていない。
本の中に登場する三人組だけでなく、本自体もすっかり大人になっていた。
私の印象では、前回読んだ児童書のほうのズッコケ三人組は、「ズッコケ三人組にはじめて触れる読者にもたのしんでもらえるように」という作者の意図が感じられた。
一方「ズッコケ中年三人組」は続編というだけあり、「ズッコケ三人組を愛してくれた読者にたのしんでもらえるように」という意図で書かれているように感じられた。
もちろん読んでいないとまったくたのしめないというわけではないが、やはりこれまでのさまざまな歴史を知っていたほうがよりたのしめるような話になっている。
冒頭で語られる三人のそれぞれの人生はけっして理想的な形ではなく、あまりにもリアルな中年の姿だ。
3人がずっと変わりなく少年の頃のままでいる、などという都合のいい私の夢想は、あっけなく打ち砕かれることとなった。
だがこれがまた不思議なことに、怪盗Xとの再会をきっかけに再び作戦を立てる頃にはすっかりいつもの三人組なのだ。どんな手で迎えうつのだろう、何がおこるのだろうとどきどきするのにも、何も変わりはなかった。
変化すること、しないこと。この作品では随所にそれを感じられる。どこかしょっぱくも、最後には心をぽっとあたためてくれる作品であることは変わらなかった。
ただ、大人になった本のほうが児童書よりも読みやすく感じてしまう自分に、すこし寂しさを感じずにはいられなかった。
取り巻くものが変わっても根っこは変わらない。だけど確かに変わってしまったものもある。
大人っていうのはなんともめんどうで、それがまた楽しいものなのだな。
前回読んだズッコケ三人組の作品で怪盗Xに遭遇していた私。
おかげで今作をスムーズに読み進めることができた。
ズッコケ三人組を幼少期に読んでいなかったので、タイトルのインスピレーションだけではじめてのズッコケシリーズにと選んだのが「ズッコケ怪盗X最後の戦い」だった。
そこで出てきた怪盗Xが、まさか今作で重要な登場人物として登場するとは。自分の直感がこんなにもさえ渡るなんてそうそうない。
勝手になんだかちょっと大吉のおみくじを引いたような気分になった。
そのときの記事はこちら▼
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