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妄想紙[vol.40]February
長岡研究室では、越境活動をそれぞれのゼミ生が行っている。どこに行くか、どのくらいの期間越境先に関わるのかはゼミ生に委ねられている。 そうすると、複数のゼミ生が行く越境先もあれば、誰も行ったことない越境先も出てくる。
誰も行ったことも見たこともない越境先の活動について話す。そのためには何が必要か。 それは聞き手が追体験できるようなエピソードである。
エピソードを紡ぎ出すには、「仕込み」をしっかりすることが肝心だ。フィールドワークの最中から「小さな出来事」を見逃さず、エピソードの種を探すような観察のスタイルが大事。長岡研究室では、こんな言い方をしながら、フィールドワークに臨んでいる。
「視る」のではなく「観る」ことを意識する
さて、ゼミ生はどんなものを「観て」きたのだろうか。そして何を感じて、何を伝えたいと思ったのか。一緒に追体験していこう。
◆【認知症/越境】勝手に作っていた当たり前に気づく、そして向き合う / さとしな
私にRUN伴の開催を知らせてくれた方も一緒にゴールの瞬間を見ており、その時に女性の方が認知症だと教えてくれた。女性の方が認知症だと知った時、私は頭の中で想像した認知症の方の印象と異なっていたために驚いた。私が認知症と聞いてすぐに頭に浮かんだのは怒りっぽい、落ち着きがないといった全体的にネガティブな言葉ばかりで、女性に対して感じた穏やかさを想像させる言葉は思い浮かばなかった。
◆【越境/自分ごと】知っていきたい。 / タカラム
パークシネマフェスティバルは収益は見込めない中、マイナスになりながらも開催していることを聞いた。わたしはボランティアキャストでありながら、最初「え!マイナスになりながらもやっているの?!どうして?!」と思っていた。当日会場で、「投げ銭をお願いします!」と言って会場を回っている本部の方の姿を見た。ボランティアキャストであるわたしも投げ銭お願いしてきて〜っと言われて、言って回っていたが、今思うと恥ずかしがって自分から声をかけて積極的にはできていなかったと思う。
◆【震災復興】復興という言葉の重み / コウディー
そもそも町全域に避難指示があったため人が入れなかったこと、2019年にやっと町の一部が避難指示を解除されたが現在でも立ち入り制限区域があること、を教えてもらった。この話を聞き、ここの畑に対する見方がぐるりと変わった。いま私の目の前に広がる畑はここ数年のに努力よって農業として形になったものであり、2011年から10年以上たった今でも復興に向けた活動が続いているのだ。この事実に直面し、震災を「過去の出来事」として捉えていた自分に気づきハッとさせられた。
◆【議論/対話】”まぁ、人それぞれだよね。”の一言で。/ ドュードル
私はこの経験だけでなく、私生活の中でも「人それぞれ」を多用していることに気づいた。時には必要な場面もあるけれど、意図的に相手との関わりを切るために「人それぞれだよね」と言ってしまうことも多くなってきた。これは、深い対話を避けたり、面倒に思ったりする自分の弱さの表れだと思う。特に、意見が食い違ったときや、自分の考えを深く掘り下げるのが怖くなったときに、この言葉を使って終わらせてしまうことがある。