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2019年4月28日 教育者のためのマインドフルネスデー:ブラザーポテトの法話

2019年4月28日に早稲田大学の戸山キャンパスで開催された「教育者のためのマインドフルネス・デー」におけるブラザーポテトの法話です。

今日は教育者のためのマインドフルネス・デーに来てくれてありがとうございます。みなさんにはぜひここでリラックスをしてほしいと思います。先生というのはストレスが多い仕事かもしれません。みなさんストレスを感じていますか?私もです。僧侶である私にもストレスがあります。私はダルマティーチャーと呼ばれる立場で、いろいろとやることがあります。この日本ツアーの後は韓国に行って、アメリカへ行って若者のためのWake Upというイベントに参加します。今回は2か月間旅を続けますがこのようなことが何度もあり、多くのアクティビティがあります。

先生であるというのは貴い仕事です。それは聖なる仕事です。次世代に知識を伝えるという役割があります。先生である、というのは美しい生き方です。先生になってもお金にはなりません。でも、愛と思いやりを人に与える仕事です。だから先生たちにがエネルギーを機会を作りたいと思っています。先生方にプラクティスをしてほしいと思っています。

「幸せな先生は世界を変える(Happy teachers change the world.)」、という言葉があります。先生が幸せだったら世界が変わります。先生が他の人からのプレッシャーからではなく、自分の喜びから行動できるとういことが大切です。先生にはたくさんのやらなくてはいけないことがあります。学校で子どもの面倒を見るだけでなく、家に帰ったら親として自分の子どもものお世話をしなければいけない人もいます。そして自分自身のケアも必要です。

先生自身が健康で幸せでなければ子どもたちに教えることは難しくなります。自分の中に強い感情が強い感情が出てくることもあります。生徒の発言や行動に対してイライラしたり怒ったりしてしまうこともあります。心の中が平和でなくなってしまうことが先生にもあります。でもそれは怒りたいから怒っているわけではないのです。もし自分の中に強い感情が出てきたらどうしますか?呼吸を思い出しますか?呼吸を思い出せるとしたらそれは素晴らしいことです。でも、往々にしてそうはできないこともあります。それは怒っている時には論理的に考えることが難しくなってしまうからです。呼吸について忘れてしまうことが多くあります。

仏教の八正道の一つに「正しい生き方」(正命)というのがあります。生徒は先生が教えたことよりも、あり方を何よりも学んでいます。話し方や歩き方、身体の動かし方どのような声で語りかけるのかなどからです。先生というのは知識だけでなく生き方を教える職業です。先生自身が幸せであれば周りにいる子どもたちもそのエネルギーを感じます。自分が幸せだと周りにもそれが伝わるのです。自分の心の中が平和じゃなければ自分の言葉や行動は平和にはなりません。心の中の平和を育むことが大切なのです。

私たちの注意は一日の中で様々なものに向いています。見たり、聞いたり、感じたりして、そして感情が湧いてきます。そして様々なことを考えます。先生というのは考える職業ですね。たくさんのことを考えていると思います。でも、今ここにいるのに何か他のことを考えているとたくさんのエネルギーを消費してしまいます。

マインドフルネスとはなんでしょうか?1つは「観察する」ということです。自分がやっていることに気づくということがマインドフルネスの1つ目の働きです。自分が何をしているのかに気づかなければ、自分自身の主人になることができません。そうでないと、習慣のエネルギーに動かされることになってしまいます。他の人が言ったことや行ったことに対してリアクションで行動してしまいます。他の人や習慣のエネルギーへの反応で自分自身が何をしているかを知らないまま行動することになります。日常の中で自分を観察できないと、こういったことが起こっていることに気づくことができません。

まずは自分自身を観察することが大切です。歩いている時は歩いていることに、話している時には話していることに、食べている時には食べていることに気がつきます。そうして気づきのエネルギーを高めていきます。「今ここ」に気づくトレーニングが大切です。自分が何を感じ、何を思い、どう行動しているのか、自分と自分の周りに何が起こっているのか、そして自分が感じている痛みや喜びに気づいていきます。

もし、自分自身に何が起こっているのかを知ることができればそこから変化していきます。もし自分自身が幸せではないことに気づいたら、どうしたら幸せになれるのかを考えます。自分がリラックスしていないことに気がついたら自分自身の身体にもっと注意してリラックスするようにします。

今ここに気づくためには呼吸を自分の錨とします。駅で電車を待っている時にもメールをチェックする代わりに呼吸に意識を向けることができます。そうすれば「今ここ」をもっと楽しむことができます。「プラクティスする時間がない」ということはできません。なぜならそれは電車を待っている間にも、いつどこでも行うことが可能だからです。

ここに来るまでの間も私たちは電車と地下鉄に乗ってきましたが、電車の中の9割の人はスマホを見ていました。スマホはより便利かもしれませんが、多くの時間を奪っていきます。スマホが普及して人々はどんどん生きている感覚を失って言っています。空や花や命の不思議と出会うよりもスマホでチャットをしています。多くの人がそういったデジタルな通信機器の中毒となっています。自分自身を失い、この瞬間を生きることを失っています。

大切なことは一度立ち止まって、自分自身の呼吸に気づき、今ここで起こっているいのちの不思議と出会うことです。喜びや幸せはそこにしかありません。

そして今ここに立ち止まり、何が起こっているかを認識することができれば、それがどこから来ているのかもっと理解することができます。喜びや痛みがどこから来ているのか見てみてください。あなたの怒りはもしかしたら、昔のトラウマから来ているかもしれません。先生が何か言ったことや両親の言葉、あるいは祖先から引き継がれたものかもしれません。もしくは、命を守るためのエネルギーかもしれません。立ち止まって見つめることができれば、自分の感情の奥にあるものを理解することができます。そして自分の中のどの種に水をあげるかを選択することができます。どんな人と出会い、どんな言葉を聞き、どんな環境にいるか、ということがあなたの中のどのような種を育てるかということを変えていきます。たとえば、子どもたちが暴力的なゲームばかりで遊んでいたら、その子の中の暴力の種に水やりがされます。自分の苦しみに水を与えているのが何で、自分の喜びに水を与えているのが何かを見ることができれば、自分自身の喜びや幸せの種を育むことができます。

そして感謝の気持ちをもつことができるようになれます。私たちにはすでに幸せになるための十分な条件がそろっていることに気づくことができます。教室にいて、生徒たちがいたら、そこにいる命を祝福してください。そこに一つ一つの命があるということが素晴らしいことだからです。おいしいご飯を食べられること、歩けること、幸せを感じられるたくさんのものを認識することができれば、感謝の気持ちがわいてきます。

そして自分の中の幸せの種を育むことができれば苦しみと向き合うこともまた可能になります。苦しみが湧き上がってきたときには、マインドフルネスのエネルギーでその苦しみを包み込んであげてください。お母さんが赤ちゃんをやさしく包む込みように抱きしめてあげてください。座る瞑想をする時に一緒に座ってあげてください。もしかしたら涙が出てくるかもしれません。そのようなときは涙が出るにまかせてください。涙があなたを助けてくれますから。そして、子どもたちと接するときにもその子たちの行動の奥にあるものを見つめてください。暴力や怒りの奥にあるのは、その子の抱えてる苦しみです。それを理解しようと働きかけていけば、あなた自身にとっても助けとなるでしょう。その子の奥にある声を聴いてあげてください。

みなさんが今日一日をマインドフルに楽しんでくれることを願っています。

(翻訳・書き起こし:Kumiko Jin)
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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
HP: https://www.tnhjapan.org/
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