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世界観をつくる、仕事がしたい

『世界観をつくる』、すごくよかったです。

ひとことで言うと、水野学さんと山口周さんが、「世界観をつくる」ことと、その必要性を対談形式で語った本です。


本書からことばを引用しながら感想をつづっていきます。


世界観がなぜ重要なのか。その答えを完結に記せば「問題を作るため」ということになります。今日の世界においては「正解=ソリューション」が供給過剰に陥ってますますデフレしていく一方で、「問題=アジェンダ」が希少化してインフレしています。

「このサービスを通してどんな未来をつくりたいのか」「この商品を通してどんな課題を解決するのか」。

いまの日本はサービスもモノも溢れているから、ビジョンやミッションが重要になってきているのだろうなとおもいました。


日本企業はずっと「役に立つという価値」で戦ってきたけれど、「役に立つという価値」は過剰になってしまい、「意味があるという価値」が希少になった。つまり、「意味がある」こそ価値がある時代に変わったのです。

スピードが速いこと、値段が安いこと、スペックが高いこと。性能が優れていて機能的価値が高ければ、いままではお客様に選んでもらうことができました。

だけどこれからは、客観的に比べられる「役に立つ」ものより、わたしにとって「意味がある」ものに価値がある。安いカフェがたくさんあるなかで、値段が高くてもスタバに行くひとがたくさんいるように。

「なんか好き」と思ってもらえることや、その人の生活のなかで「意味がある」ものになることが求められる時代に変わったようです。


これからは企業のトップだけではなく、一人ひとりに、クリエイティブ・リーダーシップや美の競争優位が必要になってきます。自分の感覚を大切にして、「自分がカッコいいんだ」って言えることがすごく大事だと思います。あるいは、誰かの提案を自分の感覚で判断して、「この意見はすごく重要だ」とか「誰も応援しなくてもこの人の提案を私は支持する」と言えるイニシアティブが、意味の時代には不可欠です。

これを読んで感じたのは、デザインを自分で決めることの大切さです。

ここの余白は16pxにする、ボタンの色は#dbaf00にする。全体のバランスを見ながら細部を決めるときに必要なのは、「こっちの方がバランスがいいから」とか、「こうした方がきれいだから」とか、自分の感覚を信じることなんじゃないかなあ。

頭で判断して、最後はこころで決断する、みたいな。


「頭ではわかるけど心は動かない」と「頭ではわからないけど心は動く」を比べたとき、これから必要なのは後者ですよね。説得の時代の20世紀が終わって、これからは共感の時代だと僕は捉えています。

論理的なわかりやすさが必要ないわけじゃないけど、これからより重要なのは「説明して理解してもらう」ことより、「共感して納得してもらう」ことなのだとおもいます。


僕はこれまで、「ブランディングって何ですか」という話をするとき、「見え方のコントロールだ」って言ってきたんです。ここまでお話してきて、「世界観をつくること」だと説明してあげたほうが、ロマンチックでわかりやすく、みんなが受け入れやすいなと感じました。

「ブランディング = 記憶に残すこと」という表現もみたことある。どれも間違いじゃなくて、「見え方がコントロールされていて」、「世界観がつくられている」から、「記憶に残る」ような気がする。


山口
インプットの方法を含めて、水野さんが教える学び方というのはどんなものですか? デザインは人に教わってできるようになるものでしょうか。

水野
端的に言うと「知識×やり方」です。知識が少ないのにやり方だけ知っていてもダメだし、知識が多くてもやり方を知らないとダメ。まずはたくさんのものを見ることがスタートですよね。

その上で、「簡単な上達方法は?」と聞かれることがよくあります。
一番目は、「らしさ」を見極められるようになること。
二番目は、書体や色といった、デザインにまつわる超基本的な知識を身につけること。
三番目は、やっちゃいけないことを知っておくこと。

デザイナーになって2年目のわたしが特に印象に残ったところです。努力の方向性を間違えずに学び続けたいです。


未来を描ける力がいかに重要か。その力がないと、「意味」をつくることも「世界観」を描くこともできない。それだけでなく、新しいものを見たときにその「意味」と「可能性」に気づくこともできない。

現在の延長線上として1年後どうなっていそうかじゃなくて、1年後どんな風に働いていたいか、何をつくっていたいか、誰とどんな風に笑っていたいか。

想像力を働かせて映像としてイメージすることが、欲しい未来に近づくために必要なのかもしれない。


いまここにない未来を想像し、鮮明に思い描いて実現への道筋を考え、最終的なアウトプットまでをつくりあげる。それがデザインの役割だと、改めて感じます。矮小な意味での表層デザインではなく、僕が思う「真の意味でのデザイン」の役割は、それだなと。
デザインは未来を連れてくる。連れてこないと、デザインではないですね。

わたしのなかでの「デザイン」がアップデートされました。デザインの力で未来を連れてきたい、です。



* * * * *

振り返ってみて思い出したのは、わたしは「意味のある」仕事がしたかったのだということ。2年前に転職についてnoteを書きました。

役には立つけど意味は感じられなかったシステム開発の仕事から、価値があると信じられる、わたしにとって「意味のある」体を整える仕事への転職。

本を読んでいて共感を多く感じたのは、きっと、わたしが大切にしたいものと著者が語ることばに重なる部分がたくさんあったから。


仕事に追われて忙しくなると、「役に立つことをしなきゃ」と思ってしまうことがる。だけど本当に大切なのは、どんな世界観をつくれるか、意味を感じてもらえるかだ。

わたしは仕事を通して、半径5mのひとの笑顔をつくりたい。

この言葉を胸に未来を描き、理想の実現に向けてコツコツと仕事を積み重ねていきたいとおもいます。



P.S.
水野さんが携わった、「相鉄都心直通記念ムービー」。「役に立つ」情報はほとんどないけど、見ていたら世界観が感じられて相鉄が好きになりました。


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ひらともや
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