必要は発明の母
活版印刷の創始者 グーテンベルク
●彼の発明だといわれている金属活版印刷術は、十五世紀のドイツ宗教改革時代にパンフレットや教養書の出版をいっそう容易にして、それまで一部の聖職者、学者だけに占められていた知識を一般大衆に開放することになった。
●大衆に知りたいという欲求、必要性があれば、それが原動力になって発明は生まれてくる。クーテンベルクは、そのことを強調しているのである。
●それまでの木版印刷を彼が「金属活版」に変えた発明は、アラビアから伝わった「羅針盤」と「火薬」を使った鉄砲の発明とともに、ルネサンス期の三大発明といわれている。いずれも「必要は発明の母」というにふさわしい発明である。
●グーテンベルクは、初め出資者ヨハン・フストとともに印刷所を作り、ゴシック体活字でラテン語訳の聖書を印刷した(グーテンベルク聖書と呼ばれている)。
●さらに活字を小さくして出版した聖書がのちにしょく宥符の印刷に用いられるなど、宗教改革運動にも役立てられている。
●今から思えば、画期的な発明なのだから、さぞかしグーテンベルクの印刷所の経営は大もうけをしただろうと思われるのだが、意外や事業は破産するのだから皮肉である。
●なぜ彼の金属活版印刷が破産したのか、それを明らかにする資料が乏しいが、グーテンベルクは一切の権利を出資者フストにゆずっている。
●一説によると、フストがグーテンベルクに資金返済の訴訟を起こして勝訴したというのだから、新技術をめぐってホットな内部抗争があったことになる。フストの印刷所は聖書、賛美歌の印刷で有名になっている。
●一方のグーテンベルクは、のちにマインツの大司教アドルフ二世の援助を受けて生活の安定を得るのだが、いずれにしても当時の宗教改革運動は布教宣伝のために大量のパンフレットを配る必要があったわけでその「必要」を母として生まれたのがグーテンベルクの「印刷術」であった。