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ドラマ化待ったなし!?『BASARA』田村由美が贈る新感覚ミステリーに予想を裏切られ続けて寝不足注意 『ミステリと言う勿れ』
ミステリって、人間描写の深みに欠けるからちょっと苦手。そんな人でも楽しめるのが、この『ミステリと言う勿れ』(1〜7巻発売中)である(だからこそこんなタイトルなのだろうか)。あの『BASARA』の田村由美先生が手がける新感覚のミステリ作品で、2019年の「マンガ大賞」「このマンガがスゴイ!オンナ篇」ともに第2位を受賞している。
謎解きしながら、ジェンダーも人生訓も雑学も学べる
まず主人公のキャラがイマドキだ。久能整(くのう・ととのう)という変わった名前の学生で、性格は常に冷めていて潔癖症。推理力と記憶力と人間観察力がスーパー優れており、顔はイケメン系ではあるけれど、残念ながら天然パーマの髪は湿気が多いとボワボワに膨れる。こんなボワボワなヘアスタイルの主人公は『三毛猫ホームズ』の片山義太郎(かたやま・よしたろう)以来なんじゃないだろうか。相葉くんじゃなくて石立鉄男の方の。若い人にわからないネタですみません。
そんな整が、何かしらの事件に巻き込まれ、そのたびにその推理力と知識力と独特の価値観を持って喋りまくる。そのトークが爽快だ。
「皆さんは その 目撃者の人を よく知ってるんですか」
「どうしてその人が本当のことを言っていて 僕のほうがウソをついているって 思えるんですか」
と、刑事をやり込めるような場面もあれば、
(家事をしてると言う男に対して)
「ゴミ捨てって 家中のゴミを集めるところから始まるんですよ」
「そこまでが面倒なんですけど」
「それで感謝しろって言われても 奥さん身体がしんどいんじゃないですか」
と、説教するようなシーンもあり、また、
「真実は 人の数だけあるんですよ」
「でも事実は一つです」
みたいな大きな物事の摂理を語るセリフまで、「説法」とも言えるようなトークが繰り広げられる。ジェンダー系のネタも多いが、ハッとするような人生訓や、知って得する雑学話も豊富で、その実、そんな会話の中に謎解きのヒントが隠されていたりするから気を抜けない。
寝不足注意! 予想を裏切られまくる展開
もちろん本筋の謎解きの方もきっちりとディープで、犯罪者がサラッと犯罪を告白したり、けろっと人を殺したり、ぞわっとするような怖い場面も出てくるのだが、そこがまた物語に深みを与えている。その人が何故そんな行動を起こしたのか、なぜ事件が起こったのか、キャラクターを掘り下げていくうちに、物語は二転三転して、常にこちらの予想を裏切られる。
読み進めるうちに、ある事件の一端が別の事件につながって、ひとつの大きな物語の流れになっていく。あ、あの話、ここにつながるんだとか、あ、あのキャラこういうことだったんだとか、なかなか計算され尽くした展開で、読むのをやめるタイミングが難しい(そして寝不足になってしまう)。
ストーリー、キャラ設定、イマドキ感。どこの角度から読んでも、ちょっと取り憑かれてしまうくらい魅力的だ。ドラマ化したら、あのキャラは誰がいい? そんな話で一晩明かせそうなくらいの骨太なミステリ作品なのである。