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漫画の中で天国のニョーボとまた一緒に飲みたい、そんな祈り『実在ゲキウマ地酒日記』
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
須賀原洋行氏といえば20年ほど前週刊モーニングで連載されていた人気漫画『気分は形而上』の作者として知られていた。
この漫画はおそらく哲学を題材にした初めてのヒット漫画ではないだろうか。しかも時折登場する哲学キャラみたいなのがシュールすぎるし、説明もさっぱり頭に入ってこない。なにより絵が素人レベルに下手くそなのである。
あ、某編集者に「漫画家さんに絵が下手くそというのは、性器のサイズの話をするのと同じだからやめてください」と言われたの忘れてた…。でもあの絵が苦手すぎて、たぶんモーニングで最後まで読む気にならなかった漫画だと思う。
そんな『気分は形而上』がおもしろく感じられたのは作者のニョーボ(実在の)が時折登場してその独自のライフスタイルや存在感が独特だったからだ。
その後、ニョーボはスピンオフして『よしえサン』という漫画になり作者得意の酒のツマミ料理や好きな地酒なども登場し、子供も生まれ子育て要素も漫画には取り入れられていった。
作者の作画レベルも少しずつ上がっていったのであるが、そんなネタで長期間続けるのは限界もある。そう考えると、やはりクッキングパパは偉大なのだが、『気分は形而上』の連載も終わり、恐らく蓄えを切り崩すような暮らしをしていたはずだ。
そんな中ひっそりと始まった連載がこの『実在ゲキウマ地酒日記』だ。彼の趣味である地酒とツマミ料理だけで構成される漫画。当然それだけでは全く面白くないのでニョーボや大きくなった息子たちが登場する。
どこまで行っても彼はニョーボ頼みなのだ。とはいえ一定の支持は得られ、小規模ながらも漫画家を続けていけるくらいの状態になったと思われていた。
ところが突然作者がツイッターであの、最愛のニョーボの死をカミングアウトしたのである。しかも連載は続いていたのに既にかなり前に亡くなっていたという…。
この2巻にはその顛末が描かれていて涙無しには読めない。ニョーボだけを愛した男が、まるで人生の全てを失ったかのような喪失感。立ち直るまでに相当の精神的努力をしたのだと思う。
そして満を持して、いや相当の覚悟を持って始めた新連載が『天国ニョーボ』。
かれは一生「ニョーボ」を背負って生きる覚悟を決めたのだろう。