ヒットの背景にモンハンあり?! 人気街道爆進中のジャンプ+漫画『怪獣8号』をガチ分析してみた
【レビュアー/澤村 晋作】
もはや漫画好きには説明不要の大人気漫画『怪獣8号』ですが、今回のレビューではそれを本気で分析してみたいと思います。
1・キャラクターについて
まずは主人公の日比野カフカ。
名前はもちろん「変身」の小説で知られるチェコ出身のドイツ語作家、フランツ・カフカからだと思いますが、主人公が変身するからであって、それ以上の意味はないでしょう。
さて、このカフカですが、おっさんです。
主人公の幼馴染・亜白ミナは、防衛隊で華々しい活躍をしています。
一方で、カフカは防衛隊に入れず、怪獣の死体を解体・清掃する仕事をしています。
いわば防衛隊のサポート業ですね。
カフカは防衛隊へ憧れを抱いていますが、どこかあきらめムードです。
そんな中、新人・市川レノが解体業に入ってきます。
彼は、防衛隊への憧れをストレートに持つ、夢に燃える若者でした。
ここの心情描写のリアルさが見事なのですが、この構造、何か似ていると思いませんか?
そう、漫画家とアシスタントです。
カフカとは、芽の出ないベテランアシスタント
ミナとは、大人気漫画家
レノとは、連載を狙う新人アシスタント
と言えるでしょう。
1話の物語の突出した生々しさの理由はここに起因します。
つまり、この3者は漫画家漫画の魅力をそのまま持っており、だからこそ荒唐無稽な世界観でもリアリティを持ったキャラクターなのです。
2・世界観設定について
さて今度は世界観設定についてみてみましょう。
まず、この物語は、地震のように怪獣が自然災害として出現する世界観です。
すぐに思い浮かぶのは「シン・ゴジラ」でしょう。
あれは怪獣が自然災害として起きているわけではありませんが、明確に東日本大震災のメタファーでした。
僕らは、東日本大震災を経験した世代ですから、他国と戦争する作品よりも、災害に立ち向かう作品の方が、よりリアリティを感じる世代と言えます。
世代については、また後述します。
3・怪獣の設定について
さて、この怪獣についてですが、くしくも現行作品である「ウルトラマンZ」とシンクロニシティを起きている要素があります。
具体的には、
「怪獣の死体を利用」
「怪獣の解体業者に黒幕が潜んでいる」
です。
もちろん、両作品とも制作時期からして、どちらかがどちらかを見て影響を受けたという事は有り得ません。
では、なぜそういうシンクロがいまこのタイミングで起きるかというと
「モンスターハンター」というゲームが日本の常識と言えるほど有名になったから
だと思います。
つまり、「モンスターから素材をはぎ取り」「モンスター素材でパワーアップする」という概念が、「モンスターハンター」の存在によって共通認識になっているということ。
この「モンスターハンター」を経て、「モンスターの死体は消えない」という常識=お約束ができます。
それまでは怪獣の死体は爆発して消えるものでした。
無論、例外はあります。ですがそれはお約束ではなかった。
更にそれが映画「パシフィック・リム」でビジュアル化されたというのが、前提にあるかもしれません。
4・まとめ
ここで前述した世代に話を戻します。(※以下、~世代と出ますが、筆者の勝手な造語です。)
いまだ人気を誇る、いわゆる「なろう系」の作品は、『ドラゴンクエスト』ネイティブ世代の作品だと思っています。
レベルアップ、ステータス、ダンジョン……
それら専門用語が説明すら必要ないのは、みんな『ドラゴンクエスト』ネイティブ世代だからです。(先行作品はもちろんあります。共通認識元という意味です)
翻ってこの『怪獣8号』の前提となる
「モンスターの死体が消えない」
「モンスターの素材利用」
等が、お約束として受け入れられる背景には、「モンスターハンター」ネイティブ世代が登場したと言えないでしょうか。
そして、若者がいま一番ハマっているゲームジャンルといえば、FPSです。
そう、この『怪獣8号』の防衛隊の連携する戦い方は、「フォートナイト」や「スプラトゥーン」に親しんだ世代には、とても馴染み深いものです。
言うなれば、「モンスターハンター」ネイティブ世代から更にもう一段階先の世代とは、すなわちFPSネイティブ世代です。
その需要をも満たしている漫画と言えませんか。
言うまでもありませんが、漫画としての王道の面白さが抜群で、これらの要素を完璧に活かしています。
要素だけあっても、肝心のそこが駄目なら人気にはなりません。
まとめになりますが、『怪獣8号』は、今の世代のための王道作品と言えると思います。