ガンダムシリーズの失われた時間を埋める作品『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』
【レビュアー/澤村 晋作】
ガンダムシリーズのおさらい
みなさんは『機動戦士ガンダム』をご存知ですね?
あらためて説明しておきますと、宇宙世紀、人類は増え過ぎた人口対策として宇宙植民を行い、宇宙にはスペースコロニーと呼ばれる巨大な円筒状の人工天体が浮かび、そこで何世代も暮らしています。
そのコロニーに住むスペースノイドといわれる人類と地球人の間で戦争が起こり、その戦闘に使われる主力兵器が人型ロボットであるモビルスーツです。
泥沼の戦争の中、モビルスーツ同士の激しいバトルが繰り広げられるのがガンダムシリーズですね。
さて、ではそんなモビルスーツで漂流するようなハメになったらどうでしょうか?
食料はどうするのでしょうか?
答えは簡単です。
モビルスーツを食え!
モビルスーツって実は食べられます
いや、モビルスーツって金属の塊では?
そう思うのも無理はありません。
しかし考えてみてください。
パイロットが座るシートは鉄でしょうか?
モビルスーツの中を通るケーブルは金属でしょうか?
そう、実はいろんな素材からモビルスーツは出来ているのです。
そして、宇宙では石油が産出されません。
そこで、モビルスーツのみならずコロニーの内装には、コロニー内でも生産できるバイオ資源由来の素材が多く使われているのです。
たとえばサトウキビやトウモロコシに由来するバイオマスプラスチックです。
なら食えますね!
それでも荒唐無稽に聞こえるかと思いますが、それを綿密なSF考証によってリアリティと説得力を持って描いているのが、『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』です。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』とはどんな話?
では『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』とは何なのでしょうか?
本作は、映画「機動戦士ガンダムF91」とTV「機動戦士Vガンダム」の間の時間軸を描く『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズの最新作です。
実は上記の時間軸は、外伝作品が多数存在するガンダムシリーズでも、大きく期間が空いているのに、そこを描く作品は非常に少ないという珍しい部分なのです。
逆に言えばそれを一手に引き受けているのが『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズ。
いわばガンダムシリーズのミッシングリンクを埋める作品と言えます。
シリーズになっていることからもわかるかもしれませんが、非常に人気の高い作品群となっており、その理由としては、作者である長谷川裕一先生の作り出す奇想天外でありながら説得力に満ちた物語であるという点が挙げられるでしょう。
それらを生み出しているのは深いSF愛。
SFというと敷居が高いと感じるかもしれませんが、おおらかな時代のSFが持っていた大風呂敷を広げたような荒唐無稽さと、現代のSFが持つリアリティを融合させた上で、難しいことを考えなくても読める漫画としての圧倒的な力が、本作にはあります。
さて、そんな本作の主人公たちは、コロニー1つ分、9千万人もの人々を救うという、とんでもない難題に挑むことになります。
これは悪い奴を倒して終わりという類のものではなく、食糧問題まで解決しなくてはならないという、生きるための物語です。
主人公たちは、この問題をどう解決するのでしょうか?
こんなにたくさんの人々の食糧を一体どうやって……?
あとはみなさんの目で確かめてみてください。