王道にして唯一無二!人気ゲームクリエイター・松山洋の「カッコ良さ」の原点『サンガース』
【レビュアー/松山 洋】
「悔い改める気などさらさらない」
「懺悔する心などみじんもない」
「神に祈ることなど毛頭ない」
これはかつて少年チャンピオンで連載されていた漫画『サンガース』に登場するセリフです。
人は誰しも自分の中に「カッコいい!」や「グッとくる」といった面白い!と感じる好みというかチャンネルのようなものがあると思います。
「こういうセリフやシチュエーションに弱い」
そう言いかえても良いかもしれません。
私にとってのそうしたネーム的なカッコ良さの原点(オリジン)こそがこの『サンガース』という作品を生み出した漫画家・笠原倫なのです。
王道の物語にも関わらず唯一無二の個性を持つ『サンガース』
『サンガース』が『週刊少年チャンピオン』に連載されていた時期が1989年~1990年ともう30年以上も前なので、絵も古臭くていかにも昭和っぽさを醸し出しているように感じられるかもしれませんが。
漫画好きの皆さんなら「漫画は絵じゃない・ネームだ!」という面白さの本質をご存知のはずです。
もう、笠原倫の魅力はまさにその圧倒的なネームの唯一無二性なのです。
とにかくカッコいい!とにかく刺さる!
チベットから日本にやって来た密教者(サンガース)の少年が、人類に災いをもたらすM(メシア)と呼ばれる異能者たちと闘うべく、パートナーとして選ばれたのは(高校1年を2回もダブった)W(ダブル)浅野という異名を持つ不良少年だった!
これがまぁざっくりとしたあらすじで、要約するとヤンキーが坊主とタッグを組んで異能者たちとバトルを繰り広げるというわかりやすい王道少年漫画なのです。
しかし、笠原倫の手にかかるとこうした王道設定漫画でも、あっという間に他に二つと無い強烈な個性を持った作品へと生まれ変わるのです。
「右の頬をぶたれたら 左前方に構ええぐり込むようにして打つべし!」
「人を呼んどいてウイリアム・ルスカ(留守か)」
「ガキのつかいとチャウシェスク‼」
「尻(けっ)! 糞(ふん)! 屁(へ)っ!」
「てめえは‼さっきの一見親切風殺人未遂的単車野郎‼」
「許してもらえるのがわかりきっている相手にあやまるのはつらいもんだぜ 時には……死ぬことよりも」
「オレが眠らないように 後ろでロッキーのテーマでも歌ってろ」
もちろんその個性はセリフだけでは決してなく、シチュエーションを含めた不屈性と折り重なって、不思議なほどの魅力へと昇華しているのです。
特にこの『サンガース』は笠原倫作品群の中でも私は抜群に大好きなのですが、全7巻の中に物語の起承転結が全て濃縮されているという点もあります。
『サンガース』の前作にあたるこの『蛮勇なり』全3巻もオススメですよ。
あー、ちなみにもっと有名な作品で紹介しておくと、実は笠原倫先生は2010年からRINとペンネームを変更されてあの『どげせん』を板垣恵介先生と合作で生み出して大ヒットされています。
が、今回はやはり笠原倫という漫画家の一番の魅力が詰まった『サンガース』を紹介させてください。
特に第7巻に収録されている最終話は数ある少年漫画の中でも最高にイカした最終回になっていますのでぜひ見届けて欲しいです。
WRITTEN by 松山 洋
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