アラフィフ漫画家の恋愛ストーリーて、もしかして作者のリアル・エッセイ漫画なのか?それとも妄想なのか?『高嶺の花』
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
しげの秀一といえば古くは『バリバリ伝説』、そして代表作となった『頭文字D』ではトヨタの名車「86レビン・トレノ」を一躍有名にしたことでも有名だ。ある意味伝説を作ってきた売れっ子漫画家だ。
『頭文字D』はその後3DCGを駆使したアニメ作品で大ヒットし、あのドリフトキング土屋圭市が実際に走行した音声を使用したリアル感溢れる走行シーンでも話題を呼んだ。
私が『頭文字D』の大ファンだったこともあって漫画家の福本伸行さん経由で一度会食をしたことがある。
その時は確か50歳前後だったと思うが、イケメンでとても50歳には見えないルックスだったことがかなり印象に残っている。
だからこそ、この漫画に出てくる主人公(アラフィフの売れない漫画家)は、しげの秀一そのものなのではないか(売れない漫画家や冴えないルックスと卑下してはいるが)と感じたのである。
頭文字Dの長期連載が終わったのでその合間に気分転換にエッセイ漫画的に描いたのかな?と思うくらいのテンポよい展開。
アラフィフで20代の元ギャルと恋愛関係になるなんて普通なら完全に妄想の都合の良い世界だと思われるけど、しげの秀一だったらそれもあり得るな、と実際に会ったものとしてリアリティを感じてしまったため、「あ、これは実話なんじゃないか?」って思ってしまって面白く読ませてもらった。
なんせ、ヒロインの名前が「高嶺花」という名前なんだよね(まんまやん!)。
その設定からしてなんというかギャグなんじゃないかって思ってしまうんだけど、『頭文字D』でもそうだったように、しげの秀一が書く恋愛ストーリーにはある種のピュア感を感じてしまうんだよね。時折吹き出しの外に小さな手書き文字のキャラクターの独白みたいなのがあるんだけど、あれもリアリティに溢れているんだよねぇ…。
世間的には『頭文字D』の続編希望が非常に多いみたいなんだけど、彼はまた新機軸をやりたいんだろうなあ…。なんだか面白い作品が待ち構えていそうで、期待したいと思える予感を感じた。