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#46 7秒の「逆」あすなろ抱き

パートナーと1日1回7秒ハグをすると、1日に感じるストレスが70%軽減するとかしないとか。

そんな研究結果を去年ラジオで聞いた私は、2ヶ月前から夫と『7秒のハグタイム』を設けるようになった。

たった7秒でストレス減るなんて、コスパ良すぎるよね!!
そんな単純な理由を添えて、夫に提案した。
もちろん日頃口数の少ない夫は「いいよ」なんて言うこともなく、こくりと頷くだけ。

ということで、夫が乗り気じゃない点をふまえ、お互い向かい合ってのハグではなく、私が夫の背後から抱きつくという、いわば「逆あすなろ抱き」スタイルで7秒ハグがスタートした。
(30代前半の方には伝わらないかもしれないので一応注釈を入れると、あすなろ抱き=バックハグの意)

7秒ハグ初日。
やはり初回は恥ずかしいので「7秒だけ失礼しまーす」みたいな感じで業務連絡風に伝えて抱きついてみた。

7秒ハグ2日目。
昨日と同じパターンだと「照れてるな」と夫に見透かされそうなので「スキありっ」みたいな感じでアクロバティックに勢いよく抱きついてみた。

7秒ハグ3日目。
ソファに寝転ぶ夫に「今日7秒まだなんだけど?」と正面から向かう。なんとなく恥ずかしさが増した。正面はまだ早すぎたか。

ちなみに夫は私にハグされている間、無言かつ微動だにしない。
だから夫に逆あすなろ抱きを仕掛けている私は守護霊のように、存在を知られず抱きついている感覚だ。
夫は口数の少ないクールキャラ(を気取る)九州男児であるため、これが私たち夫婦のハグスタイルの限界と思われる。

では、本当にストレスは軽減しているのか?と聞かれるとそこはよく分からない。でも私はなんとなく減った気がする。
日頃年子3人の母をして土日も仕事をしているため、夫との会話もかなり少ない。逆あすなろ抱きタイムは、会話はなくとも「あなたのこと、忘れてないよ」くらいの気持ちを無言で伝えられているように感じた。

まあ正直なところ、がっつり少女漫画で育った私にとっては、ちゃんと男性が女性にバックハグをする正式な「あすなろ抱き」をされたい願望は密かにあるのだが。結婚10年目の夫にそれを伝えるには今さら感がある。

そして7秒ハグをスタートして約1ヶ月が経った頃。
私はWebライターの仕事や自分のコンテンツ作りに追われていた。
納期に迫られながらも、自分のやりたいことも全部やり、文章術などの講義も受け、プライベートでは子どものサークル当番、夫の実家へ帰省……とにかく忙しかった。

ストレスなんて感じる暇がない。
もちろん夫と二人で過ごす時間もかなり減り、いつの間にか7秒ハグも自然消滅した。夫は何も言わないので、「やっと変なゲームから解放された!」くらいに思っているのだろう。




しかしそれから約2週間ほどたったある日。

珍しくビール3本くらいを飲み干してほろ酔いになっていた夫が「最近、7秒、しとらんやん」と一言こぼしたのだ。







「えええええええええ?!?!」


夫にとって「逆あすなろ抱きの7秒」がしっかり習慣になっていたことを、私はこの時初めて知った。


「へえ、寂しかったのねえ。そりゃあ悪いことしたねえ。内心嫌がってるんだと思ったから」とニヤニヤ笑う私。
そしてその日から7秒ハグを再開した。

換気扇の下で煙草を吸っている夫に後ろから抱きつきながら、この人と出会って20年も経つのに、まだまだ心は分からんもんだな、なんて考えていた。

そして「……にしても、太ったなあ。なんか着ぐるみ抱いてるみたい。首の後ろ、着ぐるみ脱がせる用のチャックついてるんじゃないか?」と、結婚当初から15キロ太った夫を心の中でイジっていた。

それと同時に「いや、もしかすると抱き枕やぬいぐるみに抱きついている感覚でストレスが減っているのかも」という仮説まで立てていた。


抱きついて5秒経過したくらいだろか。「うわっ」という声が階段から聞こえる。2階から降りてきた長女に見られた。

「『うわっ』じゃないよ。パパとママ、仲いいほうがいいでしょう?」と夫の背中越しに娘に聞くと、「はいはい」と失笑される。

そうだよな。
私たち、会話は少ないけれど、決して仲が悪いわけではない。
すれ違っているわけでもない。でも、物理的に接触するのって意外と大事なんだろうな。

もちろん6月18日の今朝も、出社前の夫に逆あすなろ抱きをした。
相変わらずこっちは向かない。

でも近頃は抱きついている私に「会社辞めたい」とかこぼすようになったので、まあ何らかの癒し効果があるんだろう(と信じたい)。

ぜひ皆様も「パートナーと7秒ハグ」お試しになって。


























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