音楽の話① 「小説と、」
音楽の話なんて聞き飽きたかもしれない。3回に1回はたぶん、音楽について書いている。
じゃあ、ちょっと違う角度から。
タイトルで音楽の話をすると書いておきながら、「小説と、」なんて言っている。でも、小説と音楽って切っても切れないですよね、ってことを書きたい。それを特に強く思うのが、村上春樹氏の小説だ。
春樹氏(我が家では「はるりん」と呼んでいるが)音楽の知識が本当にゆたかで、彼が不定期で(もはや定期で)やっているラジオでかける音楽も、本当に面白い。
例えば彼の小説に登場する音楽は、CDや楽譜にまとめられているほどだし、曲のタイトルが小説のタイトルになっているものだって多い。
だけどわたしは彼の小説を読むときに、敢えて曲を聴かないようにしている。
その曲を聴きながら読むのって、たぶんそれはそれですてきなことだ。著者と共有できるのはいつもだったら言葉だけだけれど、そこに音楽というヒントが与えられるのだから。
たぶんこの「音楽を聴きたくない気持ち」っていうのは、実写化された小説に苦手意識を持ってしまうのと似ている。わたしは小説を読むときって、自分の中にある想像力だけで読みたいのだ。
知らない国を想像し、会うことのないひとを想像し、レコードプレーヤーから流れる音楽を想像する。
ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」とか、ビートルズの「ノルウェイの森」だとか(ノルウェイはさすがに知っているけれど)、このシーンを象徴的に映すこの曲、どんな曲なんだろうと想像する方が楽しい。
彼の小説では『ノルウェイの森』がいちばん好きで、だけどビートルズの ”Norwegian Wood ” を聴いたとき、いささか驚いたのだ。「わたしの想像していたノルウェイの森じゃない!」と。
ビートルズの ”Norwegian Wood ”はあの曲しかなくて、想像と違う!と言われたってビートルズさんも困ってしまうだろう。ごめんなさい。
だから音楽は聴かない。あまりに有名な曲だったら仕方がないけれど、それでも敢えてその曲を想起したり、聴きながら読むということはまずない。
近くの文字を読みながら、でも遠くで感じていたいんだぁ。