11/13 本に手をさしのべられる

昨日の続き。
コンビニ人間』(村田紗耶香著)を読んで、主人公と自分を照らし合わせて、自分で自分の社会不適合者なところにスポットライトを当てて、「わたしはなんてダメ人間なんだ……あうぁ」と、メンタルどつぼに落ちてしまった、その後。
■『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子著)を手に取った。
内容は、タイトルそのまま。ヴィレヴァンの店長さんが、いろんな人に出会って、話して、その人に合いそうな本を薦めて。その過程で起きる内面や環境の変化を追って。最終的に、著者さんの行きつくところは……。という話。
今回の読書は、わたしのメンタルが『大好きだった図書館での仕事を人がしんどくなって逃げるように辞めてからというもの、社会に上手く嵌れない気がして落ち込んでいるダメ人間』なところからスタートしている。読み始めて序盤、ヴィレヴァンの描写で『「ダメ人間もダメなまま生きてよし」というやさしさがあった』という文章があって。ダメ人間をまるごと受けとめ・受け入れる、そんな赤ちゃんのおくるみのような、あったかくて安心できるような場所があるのか、と思うと泣きそうになって、のどの奥がぎゅっとなったのをこらえた。
でも、そんなヴィレヴァンも徐々に変わっていき、著者さんも居場所として違和感を感じてきて。この流れには、自分の退職前1年間くらいの、上手に未来が描けない、先を見通そうとすると視界に灰色のフィルターがかかる感じ、それでいて足元は足首まで泥の沼に浸かっていて動けないような、そんな感覚を思い出した。閉塞感。著者さんがコーチングのユカリさんに自分の心情を吐露する場面では、いっしょに泣いた。
そして、この本の全編を貫く『人と会って、話して、その人に合いそうな本をお薦めする』行為と、そこに発生するやりとり。人に本を薦めるのって、楽しいのよ。そのわくわくややりがい、難しさと喜び、全部知ってる。ただ、望まずに手放したものだから、思い出すとこんなに胸が苦しい。苦しくなりながら、最後まで読んだ。
■『本が好きということは、人が好きということ』的な文章を読んだことがある。松浦弥太郎さんの本のどれかだったと思う。本は好きだけれど人は苦手な自覚があったわたしは、その一文に結構なショックを受けた覚えがある。
著者の花田さんは、本をきっかけにしていろんな人と出会い、交流して変わっていく。離婚して、転職して、引越して。人生を動かしていく。変わっていく様子を素直に『うらやましい』と思った。こけてうずくまったままの自分と何が違うんだ、と。答えはわかりきっている。行動だ。花田さんは、出会い系サイトに登録して、人に会いに行っている。最初の1歩どころか、10歩も20歩も踏んでいる。わたしも、もう少し凹み沼に浸りきって満足したら、そこから抜け出して新しい1歩めを踏もう。そうしたら、何か変わるかもしれない。読み終わって、自然とそう思えた。素敵な本だった。

■それにしても、花田さんの、圧倒的な本のデータベース量よ。ジャンルの幅も。データベースが充実してないと、いくらお勧めしたくても、取り出せない。圧巻。
わたしの本データベースには、何冊くらい入っているだろうか。パラパラした本なら、図書館で図書担当をしていた5年間だけでも、ざっくり週50冊×50週×5年、で10,000冊はいくと思うのだけれど、実際に人に勧められるほど中身を把握している本は、そのうちの何冊くらいだろう。
■それぞれのジャンルにそのジャンルが病的に好きでマニアックに極めきった店員さんがいるような本屋、いいよね。それでいてちゃんとお客さんに寄り添ってくれる店員さん。ちょっと質問したら10倍くらい答えてくれる店員さん(うざい?)。そんな店員さんたちに人生相談して、全員からオールジャンルで本をお勧めしてもらいたい。し、何ならお勧めする側の一員としてもその場にいてみたい。他ジャンルの人がどんな本を出してくるのか、すごい興味ある。

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