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読書とは救済である。

うまれてくるだて
こんどは ことにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる
宮沢賢治 詩集「永訣の朝」

知っていたけど知らなかった「朗読」の世界。
この本めくって1秒、私真剣なこの詩の朗読にガシッと掴まれた心臓が、
ダイソンも真っ青な驚きの吸引力で吸い込まれていったような気がした。
南無三!なにこれ、なんだこれ!
朗読ってこんなすごいの!?

そのまま息もせずにプロローグを読んで、すぐさま朗読とはなんぞや?を調べる。行きついたのは文部科学省のサイト。
そこでは、朗読は音読とほぼ同義となっているが、以下の2つが追加されていた。

(ア)作品の価値を音声で表現すること
(イ)作品の特性を音声で表現すること
(読者の受け止めた作者の意図・作品の意味・
場面の雰囲気・登場人物の性格や心情を)

難易度高すぎかよ。
しかし、主人公たちはそんなウルトラC(古い)をやってのけていた。
彼らがチャレンジする朗読本は実に14作品。
詩集から童話、絵本、小説とジャンルも幅広く、私たちに馴染みのある作品も多いため、重厚な解説には思わず感嘆の声が漏れる。
何より、読んでいると彼らの(ア)と(イ)が聴こえてくる。
まるで、全身全霊で朗読している姿を客席で見ている観客の気分だ。

傷ついた少年たちは1冊の本の朗読を通して回復していく。
黙読との違いは多少あれど、それは、多くの人たちが読書に持つ思いや願いと同じではないだろうか。

読書とは自分を知ること

その過程では、目を逸らしてしまい込み、もう自分でもどうしていいかわからなくなってしまった心の傷と、1つ1つ答え合わせをしながら手当をする、
なんてこともあるだろう。そういった意味において、

「読書は救済である」

と私は思う。

最後の朗読本には鳥肌が立った。
壮絶な過去とそのトラウマを吹き飛ばしたかのような、その凛とした声にはまさに、"読者の受け止めた作者の意図"が表現されていた。
彼らにとってその瞬間が、永訣の朝、だった。

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