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「世界の果て」中村文則


「堕ちていく」感覚。
この感覚を感じられるのは中村さんの作品だけかも。
読んでると、心と身体が小説の主人公と重なって行く。
重なって、主人公の行動と自分の感覚がシンクロして体験していく。
だからドキドキする。
一緒に堕ちて行く感覚。
自分が「無」になって行く感覚。
でも、中村さんの文章は最後に光が差す。
最後、とは限らないのかもしれないけど、光が差すイメージ。
こんな世界だけど、でも生きたい。
生きてみたい。って光がみえる。
それは温かさ、みたいな感覚。

自分の闇の中を探って行くのはとてもしんどいのではないか、と心配しちゃう。
中村さんは勇気を持って、強靭な精神力を持って向き合い続ける。
それは今の時代の私達にとって救済のようだ。
彼がどこまで行くのか、見届けてみたい。
どこまで連れて行ってくれるんだろう。
大江健三郎とはまた違う場所なんだよね。
大江さんより、純粋で素直さがあって、温かさがある。わかりやすさがある。
優しさがある。
すごい作家だ。


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