NO.67 年の暮れに藤枝梅安の翳りを懐かしむ
2023年の大晦日は久しぶりの雨。
年々暖かくなりまるで大晦日という感じがしない…
昨夜、ただダラダラ長いだけの年末年始の特番に閉口して、ふと「時代劇専門チャンネル」を見られるようになった事を思いだし、池波正太郎原作による映画『仕掛人•藤枝梅安』を観る。
その「翳り」が心地良い名作だった。
主人公の藤枝梅安は針医者だが裏稼業として仕掛人を営んでいるが、世の中のためにならぬ悪党を殺(や)る。
さりながら常に彼の心の中には葛藤があり、仕掛人の仕事を終えると深い後悔に沈む。
梅安を演じる豊川悦司には、非情でありながら自己の行為を厭う梅安の葛藤が深い翳りとして現れそこにある種の色気が漂う。
このところ連日、この国の為政者のペラペラテカテカした小悪党の顔(ツラ)ばかり見せられているから、藤枝梅安の醸し出す絶望の翳りと悪の色気が無性に懐かしく好ましく思えてくる年の暮れだ。