弁護士野上晶平

和歌山で弁護士をしています。使用者側の労働問題、家事事件、インターネット問題に力を入れ…

弁護士野上晶平

和歌山で弁護士をしています。使用者側の労働問題、家事事件、インターネット問題に力を入れており、これらの分野に関する記事を定期的に投稿するほか、NLPマスタープラクティショナーや交渉学協会認定プラクティショナーの資格も持っているので、弁護士業務とNLP、交渉学についてもお話します。

最近の記事

人事権の行使としての降格が違法になる場合について

懲戒処分として降格を行う場合に違法となるか否かについては、「懲戒処分の適法性」に関する議論として、懲戒処分として法規制を受けるので、就業規則の根拠規定とそれへの該当性が必要であり、処分の相当性について、懲戒権濫用の法理が適用されます。これについては、別の記事で解説するとして、ここでは、人事権の行使として、降格を行う場合の違法性の判断について、解説します。 前述したように、降格には、職位・役職を引き下げる場合と、職能資格・職務等級を低下させる場合があります。 このうち、職位・

    • 昇進、昇格が違法になる場合について

      昇進・昇格させたことが、違法になる、ということは通常考えられませんが、「昇進・昇格させないことが違法である」と争われるケースはあり得ます。 もっとも、昇級・昇格の決定についての人事評価は、使用者の総合的裁量的判断の正確を有していることから、使用者である企業に広い裁量が認められており、実際に昇級・昇格が違法になることは多くありません。 他方で、違法な差別や不利益取扱いに当たる場合は、昇級・昇格をさせないことが、違法となることがあります。 たとえば、均等待遇(労基法3条)、性差別

      • 人事権行使の根拠

        前回の記事では、人事権の行使の種類についてご紹介しましたが、それぞれの人事権の行使の根拠について、お話させていただきます。 昇進・昇格について特定の従業員を昇進させるかどうかといった人事は、企業がその業績等に応じて判断していく事柄であることから、企業の裁量的判断(人事権)によって行われます。 昇格についても、使用者である企業の裁量的判断として行われることになります。なお、昇格については、項目、基準、方法等が、職能資格制度上定められていることが多いため、それらの基準に基づき、

        • 弁護士業務とNLP③

          ポジションチェンジ今日は、NLPのスキルのうち、「ポジションチェンジ」について、お話します。 ポジションチェンジとは ポジションチェンジとは、自分の位置、相手の位置、そして、第三者の位置など立ち位置を変える事によって、物事の見え方や感じ方が変化する事を体感するという、NLPのワークの1つです。 ここでは、自分の位置を第1ポジション、相手の位置を第2ポジション、第三者の位置を第3ポジションと呼称します。 ポジションチェンジの使いどころ 私は、このポジションチェンジを、交

        人事権の行使としての降格が違法になる場合について

          人事権行使の種類

          はじめに 会社における人事権の行使としては、①職位や役職、職能資格制度上の資格や職務・役割等級制度上の等級を変更する、昇進・昇格・降格、②従業員の職務内容や勤務場所を変更する配転・出向・転籍が挙げられます。   ・昇進 従業員の会社内における役職や職位を引き上げることをいいます(例:営業社員→営業所長)。 昇格 職能資格制度上(「職務を遂行する能力」によって従業員を評価し、賃金体系の基となる等級を定める制度)における資格等を引き上げることをいいます。 降格 降格に

          人事権行使の種類

          弁護士業務とNLP②

          表象(代表)システムについて表象システムとは 人は、大きく、「視覚優位」「聴覚優位」「身体感覚優位」に分けられるといわれています。 たとえば、どれか高級ボールペンを購入しようとする時を思い浮かべてみてください。 「視覚優位」の人だったら、まずはボールペンの見た目を重視するでしょう。 「聴覚優位」の人だったら、ボールペンをノックした時の音を重視すると言われています。 「身体感覚優位」の人だったら、まずはボールペンを持ってみて、手触り等を重視すると思われます。 ほかにも、「身体

          弁護士業務とNLP②

          従業員への退職金の不支給について

          1 退職金の不支給について会社内の退職金制度において、「懲戒解雇された場合」、「懲戒処分を科された場合」、「退職後に秘密保持義務や競業避止義務に違反した場合」などに、「退職金の全部又は一部を支給しない」としている会社は、多いと思います。 しかし、仮に、上記の各規定に該当するような事態が生じたとしても、必ずしも、規定通りに退職金の不支給が認められるとは限らないので、注意が必要です。 2 退職金の不支給が許されないとした例(1)小田急電鉄事件(東京高判 平15・12・11)

          従業員への退職金の不支給について

          弁護士業務とNLP①

          はじめに 元々、私がNLPに興味を持ったきっかけは、「聞く力」に関するセミナーに参加した際に、「NLP」という考え方を初めて知って、本格的に学んでみようと思ったことにあります。 弁護士1年目の時に、自分の周りの弁護士を見ていて、法律相談等の際に、顧客の話をちゃんと聞いていない、と感じることが多くありました。私は、弁護士には、いわゆる「聞く力」が大切だと修習時から感じていたことから、巷に溢れている「聞く力」に関する本を読んだほか、「聞く力」のセミナーにも参加しました。とあるセミ

          弁護士業務とNLP①

          競業避止義務について②

          3 退任後又は退社後の義務違反の場合   他方で、従業員が退職後に行った競業避止義務違反については、色々と難しい部分があります。まず、従業員がすでに退職している場合すなわち会社との労働契約が終了している場合、労働契約から発生する忠実義務・誠実義務違反、という構成は使えなくなります。  そこで、そもそも、退職した従業員に、競業避止義務を負わせることができるのか、という段階から検討する必要があります。  この場合、従業員の入社時や退社時に、退職後も競業避止義務を負う旨の誓約書等が

          競業避止義務について②

          競業避止義務違反について①

          最近、相談が多いので、競業避止義務について、私なりに説明したいと思います。 1 役員、従業員の競業避止について  競業避止義務とは、「使用者と競合する企業に就職し又は自ら共同事業を営まない義務のことをいいます(高部眞規子「実務詳説 不正競争争訟」(金融財政研究会、2020年)340頁)。  たとえば、在任中の役員あるいは在職中の従業員が、ほかの従業員の勧誘や引き抜きを行うことや、同種事業を行う会社を立ち上げることは、競業避止義務に違反する行為ということになります。  従業員

          競業避止義務違反について①